ワシントン州認定ソーシャルワーカー
角谷 紀誉子さん
2019年3月15日付で、コンサルティングのサービスは終了しました。
【公式サイト】 www.successabroadcounseling.com
シアトル在住の者です。先日、夫(アメリカ人)の会社から「東海岸に転勤しないか」という話がありました。それにともなって昇給してくれるそうで、仕事の内容にもとてもやりがいがあり、良い話だと思います。夫の給料だけでも十分に暮らしていけるのですが、私自身はシアトルに来てまだ三年で、ようやく学校を終え、やりがいのある仕事を見つけたところです。ですから、東海岸でまた新しい仕事を見つけなければいけないことや、東海岸というシアトルとは異なるカルチャーの中で再び生活の基盤を築きなおさなければならないことを考えると、この話をすんなりと承諾することに非常に不安を覚えます。しかし、夫の人生のことを考えると、やはり承諾した方がいいのかとも考えたりします。別居するというのも一案ですが、やはり私にとっても夫にとっても、二人が一緒にいることはとても大事です。夫は私がかなりの努力の末にアメリカにようやく慣れてきたのを見ているので、「どちらでもいい」と気遣ってくれています。
回答:現代のアメリカは、大多数の家族が夫も妻もキャリアを持ち共稼ぎです。そのため、どちらかに転勤の話が来た場合、二人共が仕事を持つために起きる特殊な問題があります。転勤の方は移った先で仕事が待っていますが、辞めなければならない方は、それまでのキャリアが止まってしまう、今の仕事がおもしろく辞めたくない、また、新しい土地で転職できるかという不安、その上、転勤を喜んでいる相手を見て腹が立ったり、それを一緒に喜べない自分が嫌になったり、心境は大変複雑です。それに加えて国際結婚では、広いアメリカでどこに住むかがとても重要になります。白人が大多数の土地に暮らすのと、日本人を始めいろいろな人種が住んでいる場所に暮らすのとでは、外国人配偶者のメンタルヘルスや幸せ度、社会性に大きな違いが出てくるからです。
夫が白人であれば、アメリカ中、どこへでも移っていくことができ、新しい土地へすんなり適応できますが、日本人妻が同じ程度と速さで、転地に溶け込めるのを期待するのには無理があります。もし、あなたが新しい土地になじめず、シアトルが恋しいと思うようになると、彼に対する怒りがたまっていき、二人の関係に支障をきたします。なぜなら、あなたはすでに日本からアメリカへと大移動をしてきたわけで、アメリカの中でまた移動をするのは精神的にもエネルギー的にも大きな負担になるからです。あなたを妻として選んだ彼は、そういうことまで考えて転勤を考える必要があります。一旦結婚して、妻も英語ができるようになり、働いているからといって、あなたを彼と同じ白人アメリカ人であると思いこんで、昇進・昇給で好機だと安易に決めるのは危険です。
ここで結果としてのオプションは、あなたも仕事を辞めて彼と共に移る、彼の方が先に行ってしばらく様子を見てから移る、期間が決まった転勤なら単身赴任する、別居生活をする、転勤を断る、などありますが、まず、二人で転地先のリサーチをすることが大切だと思います。あなたがどういう場所なのかを実際自分の目で見て感じることで、決断するのに必要な情報を得ることができます。「いい妻は黙って夫に付いて行くべき」という考えはアメリカでは捨ててください。ここでは「いい妻は賢い妻で、自分を幸せにすることができる人」です。まずあなたが幸せでなければ彼を幸せにはできないからです。いくら彼の給料で十分生活ができるとしても、それだけであなたが幸せではないことは今すでにわかっていることです。あなたがこれまでアメリカで積み上げてきたもの-教育・英語力・仕事ができる自信や能力-を捨てることなく、どこに行っても積み上げ続けられることが大切です。アメリカに住む外国人なのですから、一人でも生きて行ける強さと能力を常に持っていることが、必要不可欠なサバイバル・スキルなのです。
移っていく先をリサーチすることと同時に、以下のような質問を自分達に投げかけてください。シアトルにはどうして住むようになったのですか?夫の夢は?あなたの夢は?彼は昇給とやりがいがある仕事だけで、東海岸に行きたいのでしょうか?あなたは彼がそういうチャンスを望んでいたのを知っていましたか?彼は、これからも新しい土地に何年かおきに移る気があるのでしょうか?これまで二人はどうやって大きな決断をしてきましたか?どんな結婚生活を望んでいますか?二人の幸せとは何でしょうか?
最後に、彼と、一つ一つのオプションをディスカッションすること、何を決めたかという結果ではなく、何をどうやって決めたかという過程が肝心です。この転勤について、とことん話し合い、理解し合えれば、「ポジティブな妥協案」が出せると思います。
掲載:2003年6月
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