サイトアイコン junglecity.com

今さら聞けない!アメリカでの採用時のバックグラウンドチェックとは

#image_title

「とにかく人材を採用しなくてはならない」という、雇用主にとって圧倒的に不利な状況が一段落した今、真にポジションの要件にマッチした人材を採用したいと考える企業が増えているのは当然の成り行きです。

そこで、今回は、採用時に多くの企業が実施しているバックグラウンドチェックについて今一度考えてみたいと思います。

薬物検査や犯罪歴、その他の調査を行う際に雇用主が直面する法的問題やコンプライアンス問題まで、さまざまな側面を詳しく掘り下げてみました。

バックグラウンドチェック

プロフェッショナル・バックグラウンド・スクリーニング協会(PBSA)が実施した2023年の調査によると、米国の雇用主の94%が候補者に対して何らかのバックグラウンドチェックを実施しています。具体的には、88%が犯罪歴調査を実施し、67%が薬物検査を義務付けています。

差別的な選考を行うことを避けるには、雇用前のバックグラウンドチェックは会社全体で一貫して実施する必要があり、職務に関連したものでなければなりません。

たとえば、運転記録の調査を実施した結果、交通違反が多いと判明した場合は、社用車の運転を専らとするポジションの採用を取り消すことは可能です。しかし、業務で運転が求められないポジションでは取り消すことが困難なだけでなく、実施そのものが問題となります。雇用機会均等委員会(EEOC)は、雇用を決定する際に犯罪歴を確認するためのガイドラインを提供しているので、参考にするとよいでしょう。

EEOC: www.eeoc.gov/background-checks

バックグラウンドチェックの長所と短所

あまり深く考えず形式的に実施したり、人材会社などが実施した調査結果を入手するだけといった雇用主も散見されますが、特に問題のある結果が出たときは諸刃の剣となるため、注意が必要です。

下記にバックグラウンドチェックを実施する場合の長所と短所をまとめました。

長所

短所

公正信用報告法(FCRA)の遵守

FCRAは、消費者に特定の権利を与え、消費者信用報告機関(CRA)および「消費者信用報告」の「使用者」に対し、特定の義務を課す連邦法です。企業の規模に関わらず、雇用主は就職希望者や従業員の経歴調査のためにCRAを利用する際、FCRAに準拠しなくてはなりません。

FCRAでは、次のことが義務付けられています。

これらの手順に従わない場合、候補者からの訴訟リスクにさらされることになります。

薬物検査とマリファナ

候補者が職務を安全に遂行できることを確認するために、雇用主は薬物検査を実施することができます。主に、オピオイド、コカイン、マリファナなど、5種類から10種類の物質の尿検査を行う場合が多いです。

しかし、マリファナの娯楽使用を許可する州が増加したことに伴い、雇用前にマリファナのテストを実施できない州もあります(雇用後に職場で疑わしい行動があった場合は可能)。

経歴および学歴照会

アメリカに限ったことではありませんが、経歴や学歴詐称は皆さんが想像している以上に起きています。

つまり、レジュメに書かれていることは必ずしも事実とは限らないのです。経歴や学歴を確認するには、過去の雇用主への経歴照会や大学への在籍照会を実施することが重要です。

就業規則にも明記されていることが多いですが、訴訟リスクを軽減するために、経歴照会は人事のみが回答でき、雇用期間とポジション名以外は回答しない企業が多いです。しかし、その2点だけであっても、経歴の真偽を確認するには十分です。

学歴は本人から「卒業証書」の写しを提出させるのではなく、直接大学から「卒業証明書」を発行してもらうことが重要です。なぜなら、最近は偽物の卒業証書や認定証がオンラインで簡単に購入することができるからです。

犯罪歴調査

前述の通り、バックグラウンドチェックは、過失雇用を避けるために実施されます。

バックグラウンドチェック会社に依頼すると、州や郡の裁判所に記録を問い合わせますが、電子化されていない地方の裁判所の場合は結果が出るまでに時間がかかる場合もあります。

犯罪歴は軽犯罪(misdemeanor)と重犯罪(felony)に分かれており、それぞれ罪の重さによって等級がつけられています。例えば、飲酒運転は軽犯罪ですが、事故を起こしたり何度も飲酒運転で摘発されていると重犯罪になります。

犯罪歴がある候補者をすべて不採用という方針の雇用主は、一貫性の観点から、前述のように飲酒運転による犯罪歴があった場合も不採用とすることになります。しかし、候補者が業務で運転を必要としないポジションに応募し、この社内規定で不採用となった場合、EEOCのガイドライン違反となる可能性が高いです。つまり、犯罪歴があるというだけで不採用とすることにはリスクがあり、犯罪歴の内容と応募した業務の関連性を確認して判断しなくてはなりません。

まとめ

採用手順の一環として、何も問題がないことを前提にバックグラウンドチェックを実施していると、思わぬリスクに遭遇します。

そこで、バックグラウンドチェックを実施している雇用主は、適切なポリシーが存在するか、存在する場合は遵守されているかを今一度確認してみてください。

バックグラウンドチェックの結果をもとに不採用または解雇する場合、調査結果のコピーとともに、候補者や従業員に異議を唱える機会を提供をすることも忘れずに実施していただきたいと思います。

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
【公式サイト】 creo-usa.com
【メール】 info@creo-usa.com

モバイルバージョンを終了