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アメリカにおける学歴と年収の関係

読者の中には、留学を考えている方、留学がきっかけで渡米された方、将来はアメリカで働きたいと考えている方も多くいらっしゃるでしょう。そこで、今回は、日本とは異なるアメリカの学歴と年収の関係についてお話ししてみたいと思います。

アメリカでは、職種ごとに給与体系が決まっている

アメリカでは、日本の新卒採用のように、高卒、短大卒、大卒、院卒等の学歴別に初任給が決められている企業はほとんどなく、一般的には職種(occupation)ごとに異なった給与体系となっています。

高卒でできる職種の給与と、院卒でないとできない職種の給与を比べると、後者の方が当然、高くなります。

この理由から、「アメリカでは高学歴が高収入につながる」と言う方も多いですが、実はこの概念も半分は正解で、半分は誤った理解と言えます。

それは一体なぜなのでしょうか。

アメリカでよく言う「KSA」とは

アメリカの学歴と収入の関連性を考える際に必要な三つのポイントについてご説明しましょう。それは、次のとおりです。

  1. その仕事には、専門性が必要とされるか?
  2. その仕事には、専門性を得るための高度な教育が必要か?
  3. その仕事には、需要があるか?

それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

1. その仕事には、専門性が必要とされるか?

世の中にはさまざまな仕事がありますが、知識(knowledge)、技能(skills)、能力(ability) (アメリカの人事ではよくKSAと呼ばれます)がなくてもできる仕事ほど給与が高くないことは皆さんもご存じの通りです。

まずは「仕事をするのにこの3つの要素がどの程度必要なのか?」という点が一つ目のポイントです。

2. その仕事には、専門性を得るための高度な教育が必要か?

二つ目のポイントは、上記の KSA が高度な教育を受けないと身につけられないか否かという点です。

専門性の必要な仕事の代表格としてエンジニアという仕事があります。機械エンジニア(mechanical engineer)であれば、一般的に工学系の大学の学位を要求される場合がほとんどですが、エンジニアと名の付く仕事すべてに該当するわけではありません。

例えば、サービスエンジアなどの仕事は、大学の学位を要求していない企業も多くあります。つまり、学位がなくても現場で培う経験や OJT(On The Job Training:職場内訓練)などによって、その職務を遂行できる一定のスキルが身につけられるからです。

一方、ソフトウェア開発や高度な機械設計などの職種では、大学などの高等教育機関でないと学べない知識を持っていることが前提とされ、職務を円滑に遂行するために必要な条件と考えられています。

ですから、同じ「エンジニア」という名称であっても、高度な専門知識を要する職種の方が給与は高くなりますし、逆に、資格要件に必要ない学位を取得していることは、必ずしも給与アップの理由とはならないのです。

【US Bureau of Labor Statistics の参考データ】
ソフトウェアエンジニア:$111,620
メカニカルエンジニア: $93,540
サービスエンジニア: $59,160
※データはいずれも2019年5月発表の全米中間値
※サービスエンジニアは職務内容が近しい Mechanical Engineering Technologists and Technicians のデータを抽出

3. その仕事には、需要があるか?

上記のように、KSA が必要な高収入の可能性が高い職種でも、労働市場における職種の需要が密接に関連します。これが三つ目のポイントです。

超大手検索エンジン運営会社などでは、国を問わず常時優秀な IT エンジニアを求めていますが、この状況が未来永劫続くかは誰にもわかりません。

例えば、かつてアメリカでは花形産業だった鉄鋼業は大変栄えていました。あいにく私はその時代まだ生まれていませんでしたが、おそらく当時は鉄鋼に関連する専門性の高い職業は高収入で、多くの人材が求められていたはずです。しかし、今は鉄鋼業は花形産業ではなくなり、それに関連する求人も少なく、仮に専門性の高い仕事があっても成長産業と比べ、高収入になる可能性は高くありません。

このように、実際は「高学歴イコール高収入」というよりも、「高学歴を必要とされる専門性の高い仕事が高収入になる(可能性が高い)」ということなのです。

ですから、せっかく授業料を支払って努力して手に入れた学位であっても、その学位を必要とする仕事に巡り合わなければ、その学歴が給与に反映される可能性は低くなってしまいます。

また、3で取り上げた例のように、成長産業ほど待遇が良くなる傾向にあるため、時代のニーズによって高収入の仕事も様変わりすることを覚えておく必要があります。

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
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