COVID-19 のパンデミックとその後に起こった大量退職を経て、従業員を維持（リテンション）することの重要性がますます高まってきました。
これに伴い、人事部門の重要性が再度注目されているだけでなく、その職務にも高い専門性が求められるようになりました。このことは、最近実施された LinkedIn の「米国で過去5年間に急成長している職種トップ25」という調査結果からもわかります。
この急成長している25職種の中に、人事に関連する職種が5つもランクインしています。トップ10と25位までに入っている人事に関連する職種は次のとおりです。（出典：LinkedIn）
トップ 10 にランクインしている職種の中であまり珍しくないのは、昨今の物流混乱でよく知られているトラックドライバーのみで、その他はここ数年増えてきた聞きなれない役職名が多いことがわかります。また、営業、人事、医療、IT、経理に分類される職種では、女性の割合が高いことも特徴的です。
人事における高い専門性を持った職種が急成長している理由
人事における高い専門性を持った職種が急成長している背景には、人事の職務分担が可能なほどに人事に予算を割いている企業が増えていることがあります。
通常、HR Generalist は、広範囲の人事業務に携わるため、専門的なひとつの分野だけに時間を割くことができません。ここに、専門性の高い人事の職種を追加で雇用するようなトレンドができつつあるのです。
例えば、福利厚生担当の人事を雇用することによって、より魅力的で、コストを意識した福利厚生制度を時間をかけて構築し、それを維持することができるのです。
「ここ数年、主にパンデミックの結果として、変化する従業員のニーズと要求に対応するために、雇用主は職務内容や働き方への柔軟性など試行錯誤を繰り返してきた」と、LinkedIn News の求人およびキャリア開発担当マネジング・エディタの Andrew Seaman 氏は述べています。
「この不確実な時期に、雇用主は最高の人材を引き付け、満足させ、継続雇用できるよう、これまで以上に注力している。その結果、人事の役割は、従業員エクスペリエンスのような新たなカテゴリにおいて必要とされるようになった」。
「従業員エクスペリエンス」とは
「従業員エクスペリエンス」という用語は、数年前に作られたばかりではありますが、雇用主が離職を防ぐ方法として、今、人事で最も話題になっている役割の一つです。従業員が組織の中で体験するあらゆる経験価値のことを指し、従業員と企業の接点すべてにおいて発生します。
もともと、「エクスペリエンス」とは、顧客への価値提供の文脈で使われてきました。モノづくり産業においてコモディティ化が進み、モノ自体ではなく顧客へのサービスによって差別化が図られるようになったこと、また、デジタル変革によりあらゆる手続きの自動化や効率化が普及したことで、顧客はよい体験（エクスペリエンス）を得る機会が増え、どのようなエクスペリエンスを得られるかがモノやサービスを選択する上での軸となりました。「従業員エクスペリエンス」とは、これを企業内の従業員に対してもあてはめ、定着率を高めようという試みなのです。
エンゲージメントの低下は依然として続いており、ミレニアル世代とジェネレーションZは 、燃え尽き症候群、柔軟性、幸福、職場文化について、どの世代よりも懸念の声を上げています。このため、従業員エクスペリエンスがますます注目されることになります。そして、従業員エクスペリエンスを高めるために、人事部門が従業員にさまざまなサービスを提供し、企業はそのために人事の専門性を持った従業員を増員するのです。
パンデミックと大量退職時代を経て、企業は自社のポリシーに合致しない社員の退職容認や解雇ではなく、自社のポリシーを柔軟に変化させながら、優秀な人材を維持することにシフトしたのです。
日本には100年企業が世界のどの国よりも突出して多く、時代に合わせて柔軟に対応できる能力が高いと言われます。御社でもこれをぜひ発揮していただき、優秀な人材を維持しながら厳しいアフターコロナ時代を乗り切っていただきたいと思います。
総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん
2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
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