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アメリカでのリモートワーク 雇用主が注意するべき労務管理や法的な事柄とは!?

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からリモートワークを始めた企業も多いと思いますが、今後も継続するにあたり、雇用主は下記のような労務管理や法的な懸念点などを理解して対応する必要があります。

リモートワーク従業員の勤務時間管理

・Non Exempt 従業員:勤務する場所に関わらず実働時間を正確に記録し、その記録に沿った賃金を支払い、その記録は法的に要求される期間 保存する必要があります。通常、オフィスでタイムレコーダを使用している企業は、原始的な方法ではありますが、マニュアルのタイムシートの導入が簡単かつコストがかかりません。出退勤時間と休憩開始と終了時間、最低この4種類の時間を毎日記録してもらい、給料日の締め日に合わせて、必ず本人の承諾サインと一緒に提出させます。この方法の問題点は実働の追跡ができないことであり、従業員との信頼関係の上に成り立っています。

PC 上で出退勤管理ができるシステムの導入を検討するのも一考です。こちらは上記にあるトラッキングも可能なので、相応のコストはかかりますが、より正確な労働時間の管理が可能であり、パフォーマンス維持にも効果が規定できます。事務職の従業員や従業員数が多い場合に向いています。

・Exempt 従業員:オフィスへ出勤する場合と同様に、出退勤や休憩の記録をする必要はありません。Exempt 従業員は部分的な給与控除ができないため、時短勤務の対象とならないことは覚えておきましょう。つまり、終日職務を遂行しなかった場合にのみ1日単位での控除が可能となります。また、業績の悪化により給与を改定する場合も、州によっては連邦法のExempt最低賃金(週給$684)を上回る額を設定しているため、十分な注意が必要です。

情報セキュリティの維持と徹底

リモートワークの実施によって、普段とは異なる環境で職務を遂行することになり、その結果職務中にセキュリティ規則違反が発生する場合が考えられます。例えば、PC をログオフせずに放置し、機密性の高い情報を家族が見る、または誤った操作によって重要データが外部に送信されるなどのトラブル発生の確率はオフィス内の比ではありません。リモートワークのスタート前に、貸与する PC のパスワードを設定することはもちろん、スクリーンオフやスリープ機能を再設定し、PC から離れても短時間で操作ができないようにすることも重要です。

適切な「合理的配慮」ポリシーの管理

リモートワークの実施と継続は、ADA(American Disability Act:米国障害者法)の合理的配慮(Reasonable Accommodation)に関連するため、可能な合理的配慮について従業員と話し合う義務が生じます。リモートワークが雇用主と従業員に利益をもたらす一方で、パンデミックが一段落しても継続を希望する従業員が増える傾向にあるため、継続の可否を明確にするためにも、雇用主はこれらの理由と根拠を明確に書面に残しておきましょう。継続が難しい例として、

また、定期的にリモートワーク自体が機能しているかも評価し、状況に応じては実施頻度の変更やオフィス勤務への変更があることに言及しておくことも重要です。さらに、リモートワークの継続により職務指示書(Job Description)の変更や追記が必要になる場合も多いので、更新を忘れないようにして下さい。

安全な職場環境の維持

雇用主には、連邦法・州法等によって、従業員に安全な職場を提供する義務がありますが、リモートワークは通常勤務の延長として扱われるため、この義務はリモートワークになっても変わりません。

今後、リモートワークを継続していく上で、仕事に適さない場所(自宅のリビングルームなど)で仕事を続けたことによる体調不良、コミュニケーション頻度の低下によって、孤独感や疎外感などから精神的疾患などが発生する可能性も考えられますので、雇用
主は実務以外の点にも定期的なチェックを忘れないようにして下さい。

追加コストの管理

リモートワークによって、以前オフィスで使用していた機器(プリンタ・コピー機など)が自宅にない場合、どのような対応をするかあらかじめ決めておく必要があります。つまり、既存の備品を貸与するのか、新規購入して貸与するのか、予算を決めて従業員が購入し経費の払い戻しをするのか等々、いずれも上司の事前承認が必要であること、貸与する場合は書類を作成し従業員のサインをもらうことも重要です。リモートワークが長期化することにより、新たな備品の購入などで予算を見直す必要が出る可能性が考えられます。

コミュニケーションの重要性

パンデミックを理由にリモートワークを実施し始めた多くの企業では、そろそろ開始から3カ月が経過しますが、多くの雇用主が挙げるのがコミュニケーションの問題です。対面での会話に代わりメールやテキストメッセージを介したコミュニケーションが中心となったことで、表現によって生まれる誤解や指示の難しさを指摘する方もいます。雇用主はリモートワークでも十分なモチベーションが維持できているか、何らかのサポートが必要な従業員がいないか、仕事のクオリティが期待値に達しているかなど、今まで以上に十分な管理を行う必要があります。また、部署ごとでの定期的なオンラインミーティングを実施することも忘れないようにして下さい。

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
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