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「Stay Interview」 とは? 従業員の定着とエンゲージメント向上に効果

The Great Resignation という言葉が「注目」されて久しいですが、企業はこの言葉に惑わされ人材採用にばかり気を取られているように見受けられます。退職者の発生に伴って採用を実施することは人事において非常に重要ではありますが、一方で retention(従業員の維持)にも注力しなければ、組織は穴の開いたバケツ状態となり、退職⇒採用⇒退職といった負のスパイラルが永遠に継続することになってしまいます。

そこで今回は、Stay Interview について、最近のトレンドと併せて、もう少し深く掘り下げてみたいと思います。

Stay Interview と Exit Interview

現在雇用している従業員の定着とエンゲージメント向上のために、多くの企業が Stay Interview の重要性を認識し始めています。

Exit Interview と比較するとその知名度はまだ高くないので、ご存知ない方のために、今一度簡単に説明させていただきます。

・Stay Interview
従業員が働き続ける理由と、退職を考えるきっかけとなる可能性がある理由を知るために従業員に対して行われる。

・Exit Interview
退職時に行われる口述・アンケート式のインタビュー。退職決定の背後にある根本的要因を特定するために行われる。

※SHRM(米国人事マネジメント協会)の人事用語集より抜粋・翻訳し補足

終身雇用の概念を払拭する

終身雇用をイメージすると、そもそも Stay Interview という概念が思いつかないかも知れません。まずは世界でも類を見ないアメリカの Employment at will(随意雇用)を再認識するために、下記グラフを確認していただきたいと思います。

右のグラフは、独立行政法人「労働政策研究・研修機構」発行の「データブック国際労働比較 2020」に掲載された主要国別平均勤続年数を表しています。

アメリカの平均勤続年数4.2年は圧倒的に短く、日本の12.1年の約1/3となっていますが、米国情報統計局(BLS)が発表するデータでは、都市部や若年層はさらに勤続年数が短い傾向にあります。

つまり、元々の勤続年数が短く転職頻度が高いアメリカの労働者市場が、コロナ禍で同時多発的に解雇と採用が発生しさらに顕著になったのであり、必要以上に驚くべきでないと考えることもできるのです。むしろ重要なのは、この短い平均勤続続年数のマーケットで、3倍近い勤続年数を誇る日本と同様のリテンション対策を行っていては効果を期待することが難しいという点にあります。

Exit Interview と Employee Survey

このような背景からアメリカでは長きにわたり退職従業員の「なぜ」を追求してきました。これが上述の Exit Interview です。

数千名の従業員を抱える大企業では、毎日どこかで Exit Interview が行われ、結果をデータ化することは今後のリテンション改善に役立つと言われてきました。確かに Exit Interview に一定の効果はありますが、下記の問題点も以前から指摘されています。

そしてもう一つ、同じようにリテンション対策の一環として行われる、Employee Survey(従業員調査)という日本では馴染みのない方法があります。

これはインターネットを使った匿名式のアンケート調査により、従業員のエンゲージメントレベルや不満項目の把握、特定分野(福利厚生等)の興味度などを測り、必要に応じ改善することでリテンションやエンゲージメント改善に役立てる手法です。

この方法で的確に問題点を把握してそれらを改善することができれば、おそらく、考え得る最高レベルの人事メソッドになる可能性が高いです。そのため、一年に一回といった頻度で定期的に実施し、調査結果を元に優先順位の高い項目から改善を行い、リテンションやエンゲージメント向上に役立てている企業もあります。

しかし、一方で、この方法にはいくつかのハードルも存在します。

上記 Exit Interview と Employee Survey 各々の短所を考えた時、広く実施が可能で雇用主が改善点を把握しやすく、エンゲージメント向上に役立つ方法として Stay Interview が注目される理由を理解していただけたかと思います。

よりカジュアルに定期的に行う Stay Interview

最近はマネジャーが月1回程度定期的に実施する部下とインタビューに、Stay Interview に関連する質問を加えるといった、さらにカジュアルな手法が一般的になりつつあります。

「今日〇時から Stay Interview を実施します」というようにオフィシャルに行うよりも、さらに本音に近い意見を引き出せる可能性が高いのは想像に難くありません。

「最近興味を持っているプロジェクトは何?」「仕事を進める時に不足していることはない?」「今の職務の先にどんなキャリアを考えてるの?」といった質問から従業員の気持ちを聞き出し、前進するための手助けをし、立ちはだかる障害を取り除き、時として自分の経験談からキャリアパスの助言をします。

こういった双方向のコミュニケーションを繰り返す中で、問題点の把握や早期解決、キャリアパスの方向性確認等、Stay Interview 本来の目的が達せられるのです。

従業員側も、上司から自分の気持ちを表現する機会を与えられたこと、問題点改善へのサポートや自身の将来を気に留めてもらったことに対して好意的な印象を受け、これがエンゲージメント向上につながります。

「なぜ Stay するか」を知るためのヒントとなる質問例

重要なことは、上記の例にあるような Stay Interview における質問は、ディスカッションの始まりであって、単なる回答を得ることが目的ではないという点にあります。

そう考えると、立て続けに多くの質問をするよりも、質問数を限定して、そこから派生するディスカッションに時間を割いた方がより効果的な Stay Interview になるでしょう。

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
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