MENU

Great Resignation 後のアメリカにおける人材育成戦略

  • URLをコピーしました!

2023 年も残りわずかとなり、ようやく “Great Resignation” という言葉が色あせつつある中、給与水準は上がったものの、採用基準は横ばい、または下降した」という話を耳にします。

結果として、能力水準に満たない従業員の教育や、組織全体の底上げを必要とする企業が、これまで以上に人材育成や能力開発に注目する傾向にあります。

そこで今回は、アメリカでの人材育成に焦点を当ててみます。さまざまな人事分野の中でも、Training & Development は非常に奥が深く、ここですべてを語り尽くすことは難しいため、重要なポイントをいくつかお話しします。

もくじ

トレーニングを検討する際にまず行うこと

最初に重要なことは、「万人に効果のあるトレーニング(研修)のメソッドは、まず存在しない」と認識することです。例えば、一口に「従業員のパフォーマンスが悪い」と言っても、「悪い」という状況も理由もさまざまで、対象者の勤務する業種や職種も違えば、世代も異なります。この点を考えれば、出来合いのトレーニングを一方的に受講させたところで、あまり効果が期待できないことは明白です。

このような事態を回避するために、まずは自社独自の「トレーニングプラン」を設計することが重要です。とは言え、プランを設計しても、その後にトレーニングを構築して運用し、それを評価するまでを自社で行うのは難易度も高く工数もかかるので、プランを作成したら、専門性のあるベンダーを利用する方が効果的です。

依頼するに際しては、下記を明確にしておくと、ベンダーとのミーティングがスムーズに進行します。

  1. 対象となる職務に、どのようなパフォーマンスを求めているのか?
    例:ターゲット企業のニーズを発掘し、適切な自社製品の販売を提案し、新規顧客を獲得する。
  2. 対象従業員はその要求に対しどの程度のパフォーマンスを実行しているのか?
    例:ニーズは発掘できるが、適切な製品の選択と効果的な提案ができず受注に結び付かない。
  3. 要求されるパフォーマンスと実際のパフォーマンスとの差(±)は?
    例: 製品に関する技術的知識の不足、プロポーサル作成と提案スキルが弱い(マイナス)

3 番目がマイナスであれば、ギャップを埋めるトレーニングが急務です。上記のようなマイナスの例では、製品と技術知識の向上、プロポーサル作成と提案力改善のトレーニングが求められます。基準値を超える(プラス)、または基準値を満たしている(ゼロ)なら、さらなるスキルアップを求めて、上級レベルのトレーニングを提供する選択肢もあります。

トレーニングに対し、ROI の視点を持つ

トレーニングに対し、ROI(Return on Investment)、つまり、「投資した分、どの程度元が取れたか」という意識が希薄な企業は多いです。

原因は、現状の問題に対し、「何らかのトレーニング」を提供することで、事態が改善するという希望的観測があり、発生したコストを回収する意識が不足しているからです。

ハラスメント防止トレーニングのような比較的画一的なメソッドと違い、オリジナリティが高いほど、トレーニングプロダクトは高額になります。そして、内容と方法が適切でない限り、大きな効果は期待できないのは前述の通りです。

また、最も効果が期待できるのは、リテンション率向上、生産効率の改善、従業員エンゲージメントの向上などで、直接的・短期的な金銭的効果が少ないことも理解しておく必要があります。

ROI を考える際に重要なことは、何をもって成果とするかという点です。つまり、トレーニングの前後に的確な評価を行い、受講後に何が改善されて、改善された結果がどのように業務に反映されたのかを比較することが極めて重要になります。これらの結果がなくては、ROI を求めることは不可能になります。

刻々と変化するトレーニングスタイルを理解する

トレーニングのスタイルも、テクノロジーの発展とともに刻々と変化しています。

・トレーニング時間の 15%はバーチャルクラスで実施され、31%はオンラインで実施される。
・学習時間の 41%にテクノロジーベースのトレーニング方法が含まれている。
・86%の企業が学習管理システムを使用している。
・大企業の 54%がオンラインでトレーニングを実施しているのに対し、中小企業では 27%である。

出展: Employee Training & Development 8th Edition

上記の統計結果を見て、「トレーニングはもはや講義形式ではない」と思った人も多いかも知れません。しかし、現在でも、最も多い方法は講義(レクチャー)形式です。ただ、以前と異なるのは、講義を収録した DVDやオンラインで講義を配信するスタイルが増えたことです。これにより、講師や会社でなく、受講者の都合に合わせた受講が可能になりました。トレーニングのスタイルは、技術の発展とともに今後も変化し続けるでしょう。

テクノロジーの発達に伴い多様化するアメリカのトレーニングメソッド

下記の図は、現在アメリカで認知されているトレーニングメソッドです。初めて目にするものもあるかと思いますが、トレーニングを検討する際に重要ないくつかについて補足します。

  • E ラーニング
  • ソーシャルメディア
  • MOOC(無料オンライン講座)
  • モバイル学習
  • 共有ワークスペース
  • AR 技術(拡張現実)
  • ウェブキャスト
  • RSS フィード
  • アダプティブトレーニング
  • ポッドキャスト
  • ブログ
  • 人工知能
  • 通信教育
  • ミニブログ
  • 機械学習
  • ブレンド型学習
  • ウィキ
  • チャット ルームとディスカッション掲示板

出展: Employee Training & Development 8th Edition

E ラーニング

E ラーニングは、トレーニング コンテンツとの対話や他の受講者との共有、インターネットリソースの使用
を通じた学習に重点を置く。タブレットやスマートフォンなどを使って受講できるため、時間や場所による
制約がなく、受講者のスケジュールに合わせた学習が可能。反面、受講者の学習意欲が高くない場合や、進
捗確認や効果測定を怠ると成果を得るのは困難になる。

ブレンド型学習

トレーニング自体の名称ではなく、オンライン学習、対面指導、その他学習コンテンツと指導を組み合わせ
た方法を指す。ブレンド型学習は、対面での指導とテクノロジーベースの指導方法(オンライン学習、遠隔
学習、タブレットや iPhone などのモバイルテクノロジー)双方の長所を受講者に提供する一方で、双方の短
所を最小限に抑える効果を持つ。

ソーシャルメディア

トレーニングにソーシャルメディアが関連するのを意外と思うかもしれないが、新しい学習コンテンツに
関連するウェビナー、ビデオ、記事などのリソースへのリンク提供、受講者間のコミュニティ構築、ビデオ
の共有や作成など、さまざまな形で利用されている。Wiki、ブログ、Facebook、MySpace、LinkedIn などのネットワーク、X(旧 Twitter)などのマイクロ共有サイト、YouTube などの共有メディアが良く知られている。

弊社では、コスト面や利便性から、オンライン講座受講からのスタートを進めていますが、効果の面で優れてい
るのは、やはりリアルタイムの対面形式だと考えています。他のことに気を取られずに講義に集中できる、日
ごろ接点のない他社や別の職種の人々の考えを知る機会になる、なにより従業員が「会社が自分に投資して
くれた」ことを忘れない、というメリットが挙げられます。

総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん

2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
【公式サイト】 creo-usa.com
【メール】 info@creo-usa.com

  • URLをコピーしました!

この記事が気に入ったら
フォローをお願いします!

もくじ