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第20回 アメリカの独占禁止法について

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独占禁止法は、不正なビジネスを防ぐための法律です。業界での独占権を得るために行われる特定企業間の契約や特定の手段によって、価格つり上げや価格固定などの企業間価格操作、設定された販路を使うことを条件とした業務活動、市場のつりあいを目的とした競業禁止契約、あるいは競合他社の業務活動を条件を設定して制約する企業活動を禁止します。アメリカの独占禁止法は、シャーマン反トラスト法(the Sherman Antitrust Act)とクレイトン法修正第7条(Section 7 of the Clayton Act)によって法制化されています。

市場を独占する手段の一つに、企業間の契約があります。典型的な例としては、その契約に参加していない企業との事業回避や抱き合わせ販売契約などが挙げられます。抱き合わせ販売には、(1)業界内の横のつながりのある販売 (同業他社とのつながり:Horizontal Tying)と、(2)業界内とは関係がないが商品とつながりのある販売(販売業者などとのつながり:Vertical Tying)の2種類があります。

抱き合わせ販売の例を挙げてみましょう。

  1. 使用しているコンピューターの製造元と取引のあるソフトウェア会社の商品しかダウンロードできない。
  2. 企業 A はベルビュー市の販売業者のみ、企業Aの同業者である企業Bはシアトル市の販売業者のみと取引を行なうというような企業協約を結ぶ。
  3. 書籍販売店が、特別な約をしている出版会社が出版した人気のない本を店頭に置いて、販売を促進する。
  4. 特定の修理会社と特別契約をした時計メーカーが、時計の修理はすべてその修理会社(特に修理価格の吊り上げが目的)に依頼させる。
  5. 日本企業が製造した電機製品は、日本企業の部品のみ使用させる。
  6. 一定の魚介類の購入販売はアラスカ州で営業している日本企業のみに限る。

上記のような制約は、すべて独占禁止法で禁止されています。特に、それらの行為によって特定の企業が価格設定をコントロールすると、独占権の乱用とみなされます。こうした業務活動をする企業の大半は大手企業で、そうした大手企業は資本があるため業界に対する最初の投資に経済的余裕があり、他の中小企業を業界から追い出すことが可能だからです。ただし、中小企業でも業界の市場に影響を与える可能性のある企業であれば、価格操作をすることによって法的責任を負うことになりかねません。

こうした違法行為は米国法であるシャーマン反トラスト法によって厳しく禁止され、業界を独占する意図の有無に関わらず、価格固定を目的とした契約書そのものが問題になることもあるので、商品価格の設定などに関しては、十分に注意する必要があります。また、仮にその業界に大きな影響を与えていなくても、業界を独占する意図をもってある一定の企業と契約を結ぶことは違法とみなされることもあります。司法省の調査によって違法行為が発覚した場合は、相当な罰金だけではなく、場合によっては実刑判決が下る場合があります。民事訴訟の場合、たいがいは裁判の前に告訴した企業との和解によって解決されますが、通常は莫大な被害総額が求められます。実際、日本企業でも過去に多くの企業が独占禁止法の違反行為でアメリカで告訴されてきました。特に企業間の吸収合併の際には、上記の狙いを持っていなくても、一定の業界市場に十分影響を与えうると見なされれば、問題となることもあります。日本企業だからといって他の日本企業のみと取引をするとその時点で警告が出されることもあるので、アメリカで事業展開をする際にはアメリカ市場や業界の動きを認識することが必要です。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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