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第56回 学校でのいじめ(Bullying)や差別(Discrimination)への対処法

第14回のコラムでは職場でのハラスメントと差別の違いについてご説明しました。今回は、商業取引法・雇用労働法とは異なりますが、米国現地校に通う子どもが学校でいじめや差別にあったと思われる場合の対処法についてご説明します。

まず、法律上は、学校内で起こる人間関係の問題についても、1964年の公民権法 VII(Title VII Civil Rights Act of 1964):人種、国籍、性別、宗教による差別、民事不法行為法(Tort)等が適用されます。

仮に、自分の子どもが他の子どもと問題があり、他の子どもが停学にならず、自分の子どもだけが停学になったとします。日本人の親は「学校で起こったことについては監督できる範囲ではない上、学校の判断が間違っていると思えない」、または、「何か納得いかないと思っていても、学校の判断には逆らわない方が子どものためにも良いと思う」といった理由から、学校の判断をそのまま受け入れる傾向にあります。

ところが、学校が間違った調査をし、子どもとの面会の結果、不適切な判断をすることはよくあります。特に、公立の学校は政府によって運営されているため、この手続きの仕方が不適切であったことが判明すれば、学校としては大きな問題になりかねません。

従って、学校側はこの問題を避けるために最善の努力をする義務があり、停学処分を受けた子どもの親としては、学校が適切な調査と面接を行ったのか、まず確認する必要があります。

父兄面談では、次の事柄を確認する必要があります。

  1. なぜ自分の子どもだけが停学処分になったのか
  2. 停学処分を通達する過程でどのような調査をしたのか
  3. 相手の子どもはどのような主張をしているのか
  4. 自分の子どもがどのような弁解と問題の説明をしているのか、さらに、自分の子どもがこの処分が不当であると思っているのであれば、そのことも伝える

英語が母国語でない場合、学校との面接でうまく状況を説明できないようなこともあるでしょう。学校側としては、父兄がこのことを問題として取り上げる以上は、再調査し、間違いがあればそれを正す法的義務があります。さらに、父兄がこのような話し合いを学校とせずにそのままにしておけば、この事件をきっかけに、相手の子どもが自分の子どもにいじめをするような結果になることもあります。実際、公立学校の管理手引書には調査の方法が明記してあり、その結果に対する説明を記録に残すことになっています。

もし、父兄が面接・再調査を要求したにも関わらず、学校側の不備で子どもが一方的に不利な立場に置かれた場合は、学校の責任になります。また、こうした処分は記録に残り、子どもの将来の進学にも不利になるので、記録が残る問題なのか消去される出来事なのかを確認することも大切です。

問題を差別と主張するか、それともいじめ、または不公平/不備な処分として扱うかは、学校と父兄面接を通してある程度判明します。

例えば、相手の子どもが白人で、英語をうまく話せない子どもを笑いものにしていたり、学校側が英語が母国語でない子どもに適切な配慮をしていなかったりしたがために、白人の子どもに対して有利な結果をもたらしていれば、差別であると主張できます。

しかし、学校側の調査の不備や自分の子どもに対する誤解等で白人の子に有利な結果をもたらしていた場合、処分が不備であると見なされます。

ただし、仮に差別でなくても、いじめによって自分の子どもが登校拒否になったり、精神面に問題が生じたり、さらにいじめがひどくなって相手の子どもから暴力を受けるようなことになれば、調査不備であった学校と相手の子どもに対して民事不法行為として訴えることも可能です。さらに、差別法違反と民事不法行法違反が適用されると判断し、学校だけではなく、相手の子どもを訴えた事件も過去に多くあります。

しかしながら、子どもが学校に通っている限り、差別やいじめを主張することによって子どもの学校での立場や環境を悪化させることにもなるので、法的手段を取るのは最終手段です。仮に学校側の責任であっても、まずは学校と協力して環境の改善をする努力をすることが重要だと言えます。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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