社員を採用する際に雇用契約書を交わすことは将来に問題が起こることを防ぐために重要ですが、今回は、州や連邦政府から義務づけられている書類の作成・保管についてご説明します。
下記は、新入社員が入社時に記入し、雇用者が受領・保管をするべき書類です。
義務付けられている書類
I-9 Form
I-9 Form は、新入社員が入社してから3日以内に提出しなければなりません。 さらに、I-9 Form は被雇用者が採用されてから3年間、または被雇用者が会社を辞めてから1年間は保存しておく義務があります。しかしながら、万が一訴訟があった時のための資料として、7年間は保存しておくことをお勧めします。これは、証拠開示の際に必要とされる資料の時効期間です。
W-4 Form
IRS に対する税金支払いのために必要な書類です。
Notice of workers’ compensation coverage
雇用者として労働災害補償に加入するかどうかに関わらず、この選択について被雇用者に知らせる義務があります。
Consent for background check
経歴の調査については採用前に完了していることが理想ですが、この経歴調査をする際には、本人の了解が必要です。
Acknowledgement of receipt of policy handbook
小企業の経営者は社員就業規則がなくても社員の管理が容易にできることがありますが、多くの企業には社員規定があります。社員規定の内容を、新入社員が理解していることは非常に重要です。特に社員と問題があった時に規定書を基に手続きをすることによってお互いの理解を確認し、訴訟を避けることができます。ただし、社員規定は雇用契約書とは異なりますので、契約書として社員規定を利用しても契約としての法的効力はありません。
自由に選択できる書類
Consent for drug testing
麻薬等を新入社員が使用していないことを確認することは違法ではありません。また、この検査によって麻薬中毒の兆候があることがわかった場合、それを理由に採用しなくても違法ではありません。
Consent for video surveillance
上記の麻薬検査と同様に、雇用者はビデオを通して就業状況を監視することもできます。ただし、被雇用者の同意が必要です。
Agreements regarding pay, wage deductions, benefits, schedule, work location and so on
給料・休暇・病欠・就業場所・勤務時間等に関する契約書は、通常、雇用契約書に記載されていますが、記載されていない場合は、社員規則等に明記されています。さらに 特殊な雇用形態や契約を必要とする社員(例えば、社員が障害者法によって保護されている立場の方には特殊な設備を必要とすることがあります)には他の社員と異なる雇用条件や環境を記載した契約書を渡す必要があります。また、社員規定は社員規定は雇用契約書と異なりますので、契約書として社員規定を利用しても契約としての法的効力はありませんので、社員規定と別途雇用契約書を作成することをお勧めします。
Documents needed to claim tax incentives, grants and other benefits associated with hiring applicants
新入社員の採用条件によっては、特別な福利厚生が与えられることがあります。この特別の扱いは、差別ではなく、法的に正当な理由のある扱いによって決定される必要があります。
上記は2012年2月に日米協会主催の雇用法セミナーで使用した内容の一部です。
シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com
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