多くのビジネスでは、その保護されるべき財産の一つに知的財産があります。今回は、その知的財産の保護とそれを利用してビジネスを展開するための方法として使用される、独占権と非独占権の相違について、簡単にご説明します。
知的財産法を通して、発明者、設計者、芸術家、作家等の作品や商標等に対する権利が知的財産権として保護されています。米国知的財産権には、1)著作権 2)特許権 3)商標権 があります。有形の家や土地のような不動産の取引についての権利は不動産法によって規定されていますが、知的財産法は無形のものに対する売買、使用権、譲渡権、許可権等、創造者の権利を守る法律で、不動産取引の権利とは相違する複雑かつ広大な範囲のリサーチを必要とします。
創造者・発明者としては、発明物(知的財産)を保護する権利がありますが、その権利を侵害から守ると同時に、一般的には、その権利を利用して他者・他会社にその権利の使用権等を与えることによって事業を展開します。
使用権には、1)独占権と2)非独占権がありますが、主な相違点は下記のとおりです。
1)独占権(Exclusive License)
独占権の与え方には、A)地域的な独占権、B) 知的財産権の一部に対する独占権、C)一部の企業・第三者被許諾者への販売に対する独占権等があります。
一般的には、知的財産権ライセンス契約書の中で、独占権の期間も設けられています。また、一般的には、独占権を有する被許諾者は、その使用権の譲渡(サブライセンス)も可能ですが、それと同時に、許可された範囲の権利を侵害する第三者からの妨害を法的に阻止することができます。
ただし、地域的に独占権を許可する場合は、独占禁止法違反とみなされることもあるので、知的財産の価値や当事者の規模・知名度等を評価した上で、独占権を与えるかどうかの決定が必要です。
2)非独占権 (Non-Exclusive License)
一般的に、非独占権の非許諾者・企業には、使用権のみを与え、その譲渡の権利は与えません。
独占権と異なり、一般的には非独占権の場合は、地域的、知的財産権譲渡の範囲等の制約はありませんが、その販売・使用権を第三者に譲渡・許可する場合は、知的財産権所有者からの許可を必要とします。
ただし、他社・第三者が非独占権者と同時に同じ作品・物についての知的財産権を使用・販売していても、非独占権者にとり法的にそれを阻止することはできないので、それらの第三者は侵害者ではなく、競合他社ということになります。
侵害を判断し、訴訟をかけ、知的財産権所有者及びその権利の被譲渡人が侵害者に対する訴訟に勝訴すれば、裁判所からは侵害に対する差し止め命令書が出されるだけでなく、侵害による被害額の請求も可能です。
さらに、訴訟後、侵害者が所有者と知的財産権ライセンス契約を結ぶことを命令されることもあります。この契約を通して、所有者は、裁判所命令が交付された後、侵害者から権利使用のための支払いを受けることが可能になります。
なお、第37回で説明した職務著作権は、仮に従業員が創造者でも、著作権そのものが企業が所有者として同時移行し、委託業務または権利の譲渡として扱われているため、今回の権利の使用許可とは異なります。
シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
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