納税額は、企業構造と資金繰りの設定の仕方によって異なります。たとえば、米国企業には、C-Corporation、S-Corporation、Limited Liability Company、Partnership 等があり、その企業体系と採用方法によっても企業が負担する税金が異なります。また、日米にまたがって業務・採用をしている企業には各国の税法が適用されるだけでなく、日米所得税条約(Income Tax Treaty Between the United State and Japan)が適用され、二重課税を避けることができます。今回は、C-Corporation を経営するオーナー が考慮すべき国税法の仕組みと、2013年の展望について簡単にご説明します。
雇用にかかわる税金
米国の2012年の給与所得に対する最高税金率は35%ですが、2013年には39.6%に上昇する予定です。特に一個人としての確定申告が$200,000、夫婦として$250,000以上の所得がある場合は、3.8%の保険貢献税が2013年度より加算される予定です。これに加え、社会保険や高齢者向け医療保険に対する税金の支払いもあります(これは雇用者と被雇用者両方で支払います)。雇用者としては、この被雇用者の社会保険や高齢者向け医療保険に対する税金を被雇用者の給料から差し引くことが義務づけられ、これを怠った場合は、罰金等が課されます。さらに雇用者は、6%の失業保険や、州が義務づけている労働災害保険等も支払う必要があります。
独立契約社員にかかわる税金と法的要求事項
企業としては、独立社員に対して支払う税金は特にありませんが、独立社員として雇われた方は、2012年度で最高35%の税金を支払う義務があります。この率は2013年より39.6%に上がる見込みです。なお、オーナー(株主)が配当以外に独立経営者という立場で企業から支払いを受ける場合は、自営業所得税が13.3%加算され、それを引いた収入に対して、2013年より最高39.6%の税率がかかります。この方法は、企業側としては、正式に雇用した場合と異なり、社会保険や高齢者向け医療保険に対する税金の支払い、失業保険や労災保険等の支払いが必要ないので、好まれる選択だと言えます。しかしながら、第43回のコラムでも説明しましたとおり、近年、独立経営社員にかかわる問題が多く発生し、国税庁(IRS) や労働省から厳しい監査が入っています。下記のように、企業のオーナーを独立社員として雇う以外の場合は慎重な扱いが必要です。
株主にかかわる税金
一般的には、企業のオーナーは、株式を所有すると同時に給料(報酬)の支払いも受けている場合と、配当のみを受けている場合があります。先ず配当のみをうける個人の株主についてですが、この場合、現在の税法では、最高15%の資本利益に対する税金がかかります(I.R.C. Section 1 (h)(1))。しかしながら、米国連邦議会がこの税法を保持しなければ、2013年には、配当支払いに対して3.8%の健康保険貢献税(Medical Contribution Tax)が課税される上、さらに最高39.6%の税金が課税される可能性があります。その他の株主への支払い方法として、配当以外に給料(報酬)を支払う場合もありますが、上記にご説明したように、企業としては、社会保険や高齢者向け医療保険に対する税金を被雇用者の給料から差し引き、その額を被雇用者かつ株主である個人と分配しなければならなりません。また、オーナー(株主)が配当以外に独立経営者という立場で企業から支払いを受ける場合は、自営業所得税が13.3%加算され、それを引いた収入に対して、2013年より最高39.6%の税率がかかります。
企業の利益に対する税金
C-Corporation の場合は、企業利益に対する税金、すなわち配当は企業利益の一部とされるので、配当されるべき収入に対しても企業レベルで課税されます。従って、配当に値する利益に対して二重課税(Double Taxation)が発生します。
シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
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