第2回のコラムで連邦法とワシントン州の育児介護休業法について簡単にご説明しました。今回、その改定法案が2017年7月5日に可決され、2020年に施行されることになりました。
ワシントン州育児介護休業法の改定は、育児介護休暇を取得する従業員に連邦法を上回る保護を提供することを主な目的としています。これにより、ワシントン州は、カリフォルニア州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ロードアイランド州に次いで、全米で5番目に有給休暇を認めた州となりました。
特に、ワシントン州の改正法上の手当て・条件は、従業員に対して全米で最も寛容かつ有利な休業法と言えます。
まず、従業員数が50人以上の企業で働く従業員が対象になることは変わりませんが、就業時間が820時間以上の従業員が対象(従来は前年就業時間が1250時間を超える従業員が対象)となります。この条件に該当する場合、最高12週間の有給医療休暇、12週間の有給育児休暇、もし従業員が有給医療休暇と有給育児休暇の両方を要求する場合は最高で1年間に16週の有給休業が可能になります。妊娠中に困難が生じた場合は、さらに2週間の休暇が可能になります。また、従業員数が150人以下の企業は、従業員が育児介護休暇を取得するごとに1,000ドルから3,000ドルの補助金が州政府から支給されます。
これらの有給休業を与えるために、医療休暇保険制度を通し、雇用者は37%、従業員は63%の保険料を定期的に負担することになりますが、雇用者は37%以上を負担することも可能です。
また、このワシントン州育児介護休業法改正に加え、該当すれば、障害者法(RCW 49.60)と混合して休職・休暇を取得することも可能になると解釈されています。
それによって雇用者と従業員の休暇期間や取得方法がどのように設定されるべきかなどの具体案はまだ決議されていませんが、ワシントン州障害者法では従業員数が8人以上(連邦法では15人以上)の企業が対象となり、雇用者に対し、無給有給に関わらず障害者に対する企業の対応努力(Reasonable Accommodation)を義務付け、それを怠ると障害者に対する差別行為と見なされます。
従って、困難な妊娠や妊娠中・産後に病気を抱えた従業員に対して障害者法上適切な対応が求められています。
その対応のひとつの方法として休暇・休業を与えることもあるでしょう。障害者法上では有給休暇は義務付けられていませんが、ワシントン州育児介護休業法と障害者法の両方に該当すれば、有給・無給の休暇を含め、休暇を延長することは可能と解釈されます。
シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
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