知的財産権とは、原作者の作品に対する権利で、原作者の創造性に対して与えられるものです。その原作物を作者に無断で使用すると、知的財産権侵害に関する認知があるかないかにかかわらず、知的財産権侵害として訴えられることがあります。今回はこのような問題を避けるために、知っておくべき内容についてご説明します。
知的財産権が該当する範囲を知る
原作者の創造物に関しては、本、音楽、写真、映画、建築等、作者が独自に作成したものすべてのものが該当します。(17 USC) また、最近の傾向として、オンラインから発生する知的財産権問題も該当しますが、オンライン問題に関してはデジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)もかかわってきます。他の作者の本や映画(著作物)を見て、その著作物を基に自分の考えをまとめた本を出版した場合は、通常、知的財産権侵害とみなされません。ただし、原作者の創造物を引用したり、それらのものの一部を自分の著作物に取り入れた場合は、その部分(Derivative Work)に対して侵害としてみなされることがあります。引用の疑いがある場合は、侵害を避けるため、原作者に作品の一部を引用することを知らせるか、原作者の名前(作品名)を引用するかの選択があります。
原作者が誰かを確認する
仮に実際の作者がAさんだったとしても、A さんが勤めている会社との間で、”Work Made for Hire” という契約が結ばれていたら、会社が原作者になるため、著作物は A さんのものではありません。したがって、A さんが自分が作成したものを他の出版社で勝手にあたかも自分の著作物であるかのように公開したら、A さんは勤めている会社から訴えられることも考えられます。
知的財産権の継続期間を知る
原作者の創造物として分類される作品は、1978年以降に出版された作品については、一般的に、原作者が生存している間と原作者の没後70年までとされています。
知的財産権の登録の是非を確認する
原作者が知的財産権の侵害を主張し、法廷損害賠償金を求める場合、知的財産権が登録されていなければなりません。この登録は作品の公開3ヶ月後までになされているべきです。この法廷損害賠償金の請求をするために実際の被害額の計算等は特に必要とされないので、原作者が容易に侵害者に訴えを求めることができます。したがって、もし登録されていない知的財産権の侵害で訴える場合は、原作者は実際の損失額を証明するか、または侵害者の指し止め(Injunction)を要求するかの選択になります。ただし、実際の損失額の証明には時間と費用がかかるので、よほど大きな案件でなければ、訴える意味がないと言えます。
公正使用の弁護(Fair Use Defense)を利用する
原作者の作品を、教育、リサーチ、または論文等の非営利的な目的で使用した場合は、Fair Use として認められ、侵害とはなりません。これは、知的財産権侵害に対する弁護(Defense)として、訴えられた侵害者側の弁護としてよく使われます。
侵害の時効期間を知る
民法(連邦)上で侵害を訴える場合は、その侵害が発見されてから3年以内に訴えなければ時効となります。例えば、もし原作者が5年前の侵害に対して訴えてきたら、時効として訴訟を却下させることができます。
シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
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