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第51回 ジョイントベンチャー/共同経営者間の問題と契約書の必要性について

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ワシントン州を含む各州では、会社の運営方法とそれに必要な資料等に関する規定、株主に関する規定(法人企業法のみ)、パートナーとの関係における規定、会計や清算に関わる規定、解散や会社閉鎖に関する規定を、法人企業法、共同経営者法、有限会社法で定めています。

まず、企業設定にあたっては、多くの起業家は、税金対策や法的賠償責任を軽減するために組織を法人化します。多くは設立当初は数人の発起人で経営を始め、企業繁栄を想定して経営を続けますが、組織やその企業利益/損益の増減、資産価値の変化に従って、経営者同士の間で経営方針の相違が生じたり、一部の経営者にのみ利益があるように経営が進められたりするなど、結果的に経営者間の問題が発生することは少なくありません。

例えば、ある企業とのジョイントベンチャーでレストランを共同経営することになり、相手企業が経営のための融資をし、自分がレストラン経営者として運営することになったとしましょう。レストランの状況によって給料が設定されることになるという予測にも関わらず、予想以上に経営がうまくいっている場合に、共同経営者が自分の給料(Management Fee)を増やさない一方で、不公平な割合の利益が相手共同経営者の懐に入ってしまっていたら、レストラン経営者には何らの恩恵もないことになります。また、共同経営の開始時点で、共同経営者の一人が他の経営者が経営から手を引けなくなるような企業構造、例えば、辞めた経営者に個人的に賠償責任を負わせるような仕組みにして契約を交わすこともあります。このような一方的な経営の場合、不利な立場に置かれている経営者は経営を辞めても続けても損をする仕組みになっています。

多くの企業は、利益配当の仕方を含め、共同経営者間の契約に規定を設けて企業の運営をしています。しかし、中小企業(数人で経営している企業)の経営者間には、そうした規定が明確に規定されていないどころか、インターネットで見つけたひな形の契約書をそのまま使用したり、そうした契約書がないままで経営していることがよくあります。それは、多くの中小企業経営者は、友人関係や親類関係等の特別な人間関係を通して企業を共同経営し、「相手を信用しているから、契約書等は重要ではない」と考えているからとも言えます。

しかしながら、小企業になればなるほど、意外に紛争の度合いや内容も複雑かつ特殊になりがちです。特に企業内の問題解決に関しては、法人企業法(Business Corporation Act)に細かい規定があります。

仮に契約書に詳細が記載されていなくても、裁判所がその法律に従って経営者間の問題解決を命じたり、場合によっては会社閉鎖を命じたりすることもありますが、有限会社法(Limited Liability Company Act)は法律自体が新しいので、法廷でも対処の仕方が異なります。特に、共同経営契約書(Operating Agreement)に共同経営者間の問題解決の方法や資産の清算方法等が明記されていないと、法廷を通しての問題解決を選択した場合、費用のかかる長い紛争になります。それは、特に有限会社法に関しては、よほど企業経営が現実的ではなく、共同経営が不可能であると判断するほどの紛争でなければ、裁判所が契約書に規定されている条項以上の解釈と判断を回避する傾向にあるからです。

従って、特に少人数でジョイントベンチャーや共同経営を計画する際は、法廷を介した紛争解決を避けるためにも、個々の企業や産業の特徴、そしてその企業の経営者間に特有な問題を想定したうえでの問題解決の方法が契約書に規定されている必要があります。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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