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第85回 夫婦で合同会社(LLC) を経営する場合に気をつけること

ワシントン州は Community Property State(共同財産制の州)といい、結婚している間に得た収入は、夫または妻のどちらかのみに支払われたものでも、夫婦の共同財産と法的に認められています。したがって、夫婦が離婚をする際、一方のみが働いて得た収入は、個人財産として認められない限り、ほぼ夫婦間で均等に分配されます。

これらの分配方法や財産権に関して、もし夫婦がW-2フォームを会社から受け取る従業員であれば、離婚の際の報酬や財産の分配は複雑ではありませんが、家族内での会社経営から得る利益に対する所有権と財産分配については少し複雑です。

第16回のコラムで企業体の種類の概要を簡単にご説明しましたとおり、C-Corp の場合、株主等の権利を守る規定等、法令上の規定が細かくなされているため、書類作成や申告書類・情報等の提出義務が多くある上、Double Taxation と言って二重課税の問題もあるため、多くの中小企業経営者は C-Corp を選択しません。S-Corp は、二重課税の問題はありませんが、C-Corp と法的に同様の法規定が適用されるため、書類や情報の管理の複雑さは変わりません。したがって、中小企業経営者は一般的に LLC(Limited Liability Company) を選択します。LLC のオーナーは Member といって、すべてのオーナーがお互いの契約に基づいて経営と運営にあたります。さらに、LLC では Sweat Equity といって、会社に金銭的な投資をせず、労働価値を会社に投資することによって会社所有権を得ることが可能です。ワシントン州法でも LLC に関する法令(RCW 25.15.)はありますが、法令自体が Member 間の会社所有権・経営権に関する契約を尊重する形になっているため、自由かつ柔軟性のある経営が可能です。

しかしながら、夫婦のどちらか、または両方が契約書なしで LLC を所有して経営し、会社の財産と個人の財産を混同していた場合、特に夫婦が離婚する際、多くの問題が発生します。たとえば、片方のみが会社を経営していた場合、離婚の際に相手側がその経営利益の半分を要求することは、家族法上、一般的です。したがって、会社法規定と契約上の条件による財産分配を希望する場合は、婚姻中の会社における貢献と配当に関して事前に夫婦で契約書を交わすことが必要です。それによって、離婚となった際は、会社法(RCW 25.15.)と契約条件に基づいて会社利益の配当がなされます。仮に夫婦両者が経営している場合でも、お互いの貢献度や所有権を守るために夫婦間で会社経営に関しての契約書を交わすことによって、不当な要求や負担を避け、また家族内の財産と区別して管理することが可能です。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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