多くの契約書には、契約内容に関して論争・異論があり、裁判官や調停人を通して問題解決をすることになった場合、「勝訴した側に、敗訴した側から、正当な弁護士費用が支払われる」という仕組みが記載されていることがあります。
その意味は、「勝訴したからといって、自分が支払った弁護士費用の全額が戻ってくるとは限らない」ということですが、通常、Reasonable Attorneys’ Fees といって、正当な額と見なされる範囲で支払いがなされます。
そこで、正当な弁護士費用はどのように検討されるのか、簡単にご説明します。
契約では$200,000の支払いが約束されていたにもかかわらず、期日になっても支払いがなく、また、支払いがないことを相手企業に伝え、支払いを求めても、支払い義務が発生していることを無視され、そのまま滞納が続いたと仮定します。
原告が訴状を法廷に提出し、証拠開示や宣誓証言を求め、最終的に略式判決で勝訴したとした場合、勝訴した当事者に正当な弁護士費用の支払いがなされることが契約に規定されていれば、判事はそれに従って原告が被告に正当な弁護士費用を請求することを許可します。
その際、賠償額に比例して弁護士費用を調整することもありますが、一般的に、判事は正当な弁護士費用か決定する要素として次の事柄を検討します。
1)弁護士の人数、作業の内容や、かかった時間
2)弁護士の時間料金
3)案件の複雑さや紛争の深刻さ
これは、Lodestar Calculation(指針計算)と呼ばれるもので、賠償金額にかかわらず、紛争そのものの性質や作業量を考慮して計算されます。
また、この Lodestar Calculation では、勝訴した側の弁護士の論拠や手順が勝訴に直接つながる業務かどうかの審査もあり、それにかかったコストやアシスタント等の間接費も含まれます。
従って、この案件において、原告側の弁護士が損害賠償額の5倍にあたる$1,000,000の弁護士費用を請求したとしても、原告が勝訴すれば、その弁護士費用の全額を請求することができ、また、全額が支払われることもあります。
したがって、契約交渉時はもちろんのこと、紛争を調停や裁判で解決すると決定する前に、または、被告側になって訴状の答弁を出す前に、弁護士と勝訴の見込みやリスクについて、十分な話し合いをしたうえで、商取引をすることが大切です。
シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
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