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第12回 人員削減(Reduction In Force)・レイオフ・解雇手当・失業手当給付金

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組織的な人員削減 (Reduction In Force)とレイオフ

最近多くの企業が景気の波に押され、さまざまな方法で支出を抑えようとしています。その方法の一つが、人員削減です。

削減の仕方には、組織的な人員削減(Reduction In Force)と、少人数の社員を一時的に削減する、いわゆるレイオフがあります。

前者の場合は主にある事業・事業所の組織変更に伴って、大幅な人員削減を組織的にして一部の社員のみを残す場合に行われます。これは必ずしも不景気だから行われるとは限りません。後者の場合は、ある部門・事業内で一部の人員に与える仕事が十分になく、非組織的に解雇します。

いずれにしても、被雇用者の立場からすれば、組織的な人員削減であろうと非組織的な解雇であろうと、その後に与えられる解雇手当における大きな違いはありません。

企業の人員削減・レイオフの仕方

連邦法や州法によって被雇用者を差別待遇から守る法律が制定されているため、企業がある一定の社員を解雇する際には、慎重な計画と執行を要します。例えば、1)社員の勤務年数に関する考慮、2)公平な業務評価の提示、3)他のポジションへの移動の可能性の有無、その他には解雇を決定する理由をはっきり説明できる証拠・資料を用意したうえで、社員に解雇を通知します。さもなければ、差別待遇として後に元社員から訴えられる可能性があります。

ただし、そうした訴訟の可能性を避けるため、企業によっては自主解雇を募ったり、解雇手当を出す代わりに社員の訴訟権利の放棄を要求する解雇契約を結ぶこともあります。

自主解雇の代償と解雇手当受領の代償

さて、解雇される可能性のある社員としては、解雇されるまで待つよりも、「自主解雇をした方が退職に伴う手当てが多くもらえるのなら、自主的に退職をした方が良い」と思う社員もいるでしょう。しかしこの場合、州からの失業手当給付金が配給されない可能性があります。

最近の Verizon v. Employment Security Dept でのワシントン州最高裁判所の判決によると、仮にレイオフの一環として自主解雇をしたとしても、企業がその自主解雇をワシントン州のレイオフに関する例外規定(the employer-initiated layoff exception of Wash. Admin. Code Section 192-150-100(1))に従って承認しなければ、州からは失業手当給付金を配給しないということです。さらに、解雇の対象になった社員にとって解雇手当を受けとるか解雇契約にサインをして訴訟の権利を放棄するかは、状況によっては判断が難しくなります。

例えば、ある社員が上司から性的嫌がらせを受け、これを雇用者も承知していながら対応せず、被害者の社員が解雇の対象になった場合や、40歳以上の社員が主に解雇の対象になった場合は、差別待遇として企業を告訴することができます。また、入社当時に提示した約束事を企業がまったく執行しないまま社員が解雇の対象になった場合は、虚偽陳述として企業を告訴することもできます(第11回参照)。ただし、社員が解雇に伴って告訴権利の放棄に関する条項を含む解雇契約を企業と結び、その代償として解雇手当をもらう場合は、企業に対してどんな案件に関しても告訴する権利を失うことになります。

このように、解雇の過程では社員としてさまざまな事項に関する考慮と決断を要するため、企業としては契約書の条項の一つとして、弁護士に相談することを薦める条項を含む必要があり、特に40歳以上の社員に対しては考慮期間として最低21日を与える法的義務があります(The Older Workers’ Benefit Protection Act)。いずれにしても、社員が解雇の対象になった場合や解雇契約を受けとった際には、権利損失・資金損失を最小限にとどめるためにも、弁護士に相談することを強くお勧めします。

失業手当給付金受け取りのための申請

ワシントン州でも申請手続きは Employment Security Department of Washington State で扱っています。申請者はレイオフをされたらすぐに申請手続きをするよう義務づけられています。なお、基本的には過去12ヶ月間に企業で社員として働いていた方が対象で、自主的に退社したり、過失が理由で解雇されたりした場合(首)は該当しません。

また、通常、社員が解雇手当給付金を企業から受領している期間は、失業手当給付金を受け取ることはできません。規定では26週間は失業手当給付金が配当されますが、その間に臨時収入があったり、休暇・旅行などで就職活動をしなかった期間は対象外となり、その期間分は延期されます。いずれにしても、ワシントン州では最近規定が変更され、さまざまな条件があるため、申請の際は Employment Security Department of Washington State の案内書を精読されることをお勧しめます。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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