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第61回 企業秘密(Trade Secret)を漏らさないための方法

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企業の資産とその価値を査定する際に考慮される重要な要素のひとつとして、企業機密情報が挙げられます。今回は、その企業機密情報の定義とそれを守る方法についてご説明します。

経済スパイ活動法(Economic Espionage Act of 1996 (18 USC 1831-39))では、企業機密(Trade Secret) とは、1)企業経営者が秘密として保持しているビジネス上の情報および 2)その情報自体に社会にとって経済的価値のある情報と定めています。また、社外秘(Confidential Information)の情報もこれに含まれます。Proprietary Information という言葉を使用することもありますが、企業内での情報はすべて Proprietary Information として扱われます。

企業情報の例としては、特許商品はもちろん、顧客リスト、商品の値段、商品発送のための手段と方法、作業工程における規定、化学製品等の調合法、ソフトウェア/プログラム、技術開発のための考案書、企業経営法や採用方法等、さまざまな情報が企業に属する機密情報として考えられます。前述のように、こうした情報が外部に漏れないように努力するのは企業側の義務で、それを怠って情報が漏れた場合、法的に対処することは不可能です。従って、企業経営者としては、下記のような秘密保持のための措置を取らなければなりません。

  1. 社員と競合禁止条項・契約(Non-Compete Agreement) を結び、社員が会社を退職した後も企業機密が競合他社に漏れないようにする。
  2. 雇用契約書に機密情報(Proprietary Information/Trade Secret)取り扱いに関する条項を含み、特に従業員が退職する際に企業機密情報すべてを企業に返還することを約束させる。
  3. 一部の社員(たとえば役員)のみがアクセスできるようにするなど情報を区別し、そうした情報を特定の安全な場所に保管する。コンピュータに保管する場合は、それらの社員に特別なパスワードを渡し、他の社員がアクセスできないようにする。
  4. 従業員に企業機密となる情報・書類のリストを渡し、外部に漏れないよう厳重に保管するよう伝える。
  5. 社員規定にも企業機密となる情報のリストを列挙し、社員がそれを理解していることを確証するため、社員規定に署名させる。
  6. 機密情報の管理と保管がなされているかを定期的に確認する。また、社員全員とも確認する。
  7. 機密情報と判断される情報・書類には、”Confidential” や “Company Sensitive” “Company Proprietary” というラベルなどを貼ることによって、誰にでもそれが企業秘密であることがわかるようにする。特にこのようなラベルは企業訴訟中の証拠開示の際に訴訟相手に証拠として開示・提出する情報であるかどうか判断する重要な目印になる。

しかし、上記のように機密情報保持のための手段と手続きを取ったとしても、企業機密がまったく外部に漏れないという保障はありません。元従業員、あるいは外部の人物が企業の機密情報(または国や政府の情報)を盗み、部外者(海外政府や外部企業)の利益として利用した場合、その情報盗難者には罰金が科されたり、犯罪行為と見なされて拘置されることもあります。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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