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第13回 ワシントン州の労働災害補償(Chapter 51.32 RCW)について

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もくじ

仕事中にけがをした場合

雇用者は被雇用者に対して保険をかけることを法的に義務づけられており、被雇用者が職場でけがや事故を起こした場合はその保険から費用が負担され、基本的に新しい社員を採用するごとに Master Business License を改定することを義務づけられています。

また、職場には必ず救急箱を設置することも義務づけられています。被雇用者が仕事中にけがや事故を起こした場合は通常、申請書・報告書が病院の医者から直接ワシントン州の Labor & Industries Department に送られますが、雇用者はその手続きの仕方などの指示をし、保険の受け取りが速やかに行なわれるようにする義務があります。

補償の可否については数日後かかりますが、そこで申請が認可されたら、けがや病気の度合いによっては被雇用者の仕事のスケジュールの調整をし、必要であれば被雇用者に相当の休暇を与える義務があります。

なお、被雇用者としては、どんな些細な事故やけがでもまず手当てを求める必要があり、被雇用者はそれと同時に雇用者に即座にけがや病気の報告をします。病院(救急病院)に行く必要がある場合は、すぐに病院での手当を求め、医者からの報告書をもらうか、そこで労災の申請をしてもらいます。その際、被雇用者の指定の医者を選択することが勧められます。

過去に雇用者指定の医者に手当てをしてもらった被雇用者が労災から保険の申請を却下されたケースがありましたが、これは雇用者が労災からの支払いを妨げるために自分の医者を通したためだとわかりました。こうした雇用者の職権乱用を避けるためにも、弱い立場の被雇用者としては慎重な選択と判断を求められます。通常、雇用主は治療費のみの負担となりますが、けがの度合いや場合によっては給料の不足分や身体障害者にかかわる手当ても出すことになります。また、弁護士料も法律によって労災から給付されることになっているので、職場でけがをした場合はまず弁護士に相談することを勧めます。

職場でのけがや事故が第三者の過失によって起こった場合

職場でのけがや事故が第三者の過失によって起こった場合は通常、労災の対象にはなりません。例えば、交通事故が他の運転者(仕事仲間以外)の過失によって起こったものは、その事故の責任を負うべき運転者が自分の保険を通してすべてをまかなうべきだからです。また、建設請負業者が家主の敷地で仕事中に庭の植木などにつまずいてけがをした場合、家主に過失があれば家主がそのけがの費用負担をしなければなりません。

さらに、他の製造会社の機械の故障によって起こった事故もこれに含まれます。こうしたけがの原因は病院の記録から判断することが可能であり、この記録によって雇用者および企業以外の第三者に過失があると Labor & Industries Department が判断した場合は、州から Third Party Election Form(第三者選択に関する書類)が送付され、その指示に従って第三者に費用を要求することになります。

また、この第三者に対する申し立てと労災からの支払いの両方を利用できる場合もありますが、案件によって利用の仕方がかなり異なりますので、こうした案件は通常弁護士を通して処理されます。

雇用者に対する申し立て

上記でも触れたように、雇用者が法律に従って労災に加入している場合、雇用者に過失があって被雇用者がけがをすれば、労災からそのけがに対する費用がまかなわれます。

ただし、雇用者が故意に被雇用者にけがをさせたり、労災に加入していなかったりした場合は、被雇用者は雇用者に対して保険を通さず、個人的に治療費や給料の損失分を請求することができます。

また、被雇用者に正当な理由があるにもかかわらず雇用者が労災の申請を拒んだり予定された復帰の期日を短縮した場合も、雇用者を訴えることができます。

さらに、被雇用者が労災の申請をしたために解雇の対象になったり異動の対象になったりした場合は、差別待遇として訴えることができます。

従って、雇用者には、保険に加入し、それを必要に応じて利用することはもちろん、社員に十分な回復の時間を与え、特別の理由がない限りは元の職場に復帰させることが義務づけられています。

ワシントン州労働災害補償に関しての詳しい情報については、www.lni.wa.govをご覧ください。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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