アメリカで生まれた子供は、親の国籍に関係なく、自動的にアメリカ国籍を取得します。
この制度を出生地主義(birthright citizenship)といいます。
アメリカ以外でも、カナダやメキシコ、ブラジルなどがこの制度を採用しています。
Birth Tourism とは?
Birth Tourism という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、出産旅行、つまり生まれて来る子供にアメリカ国籍を取得させるためだけにアメリカ国内で出産することが目的で、妊婦がアメリカに渡航することです。
ここ数年では、外国籍の妊婦を対象に、アメリカへの渡航準備から、ビザの申請、アメリカでの宿泊施設や出産する病院や、産後のナニーの手配などを高額で請け負うブローカー・出産代理店ビジネスが存在することがニュースになることが目立つようになりました。
出産旅行は、一件$20,000~$50,000と言われていますので、富裕層が対象であることがわかります。昨年12月には、カリフォルニア州で中国系のブローカーが、中国から多くの妊婦の出産旅行を斡旋したとして有罪判決が言い渡されたのも記憶に新しいかと思います。
なぜアメリカに来て出産するのか?
なぜこのようなことをするのかというと、アメリカで生まれた子供は、出生と同時に自動的にアメリカ国籍を取得し、アメリカ人としての特権を受けることができるからというのも一つの理由です。しかし、最大の理由は、その子供が21歳になった時に、外国籍の親のグリーンカード申請をスポンサーすることができることだと言われています。それ故、このような状況下で生まれた子供はアンカー・ベイビー(anchor baby)と呼ばれています。
出生地主義は、たとえ親が不法移民であっても、アメリカと何の結びつきもなく単に出産のためだけにアメリカに足を踏み入れただけの外国人であっても、アメリカで生まれた子供に国籍を与え、アメリカ人としての特権や恩恵を受けることができる制度です。そのため、悪用されるケースも多く、トランプ大統領は、「アメリカ政府の財政負担を増大させるクレイジーなポリシーだ」と批判し、制度の廃止を検討してきました。
国務省による、出産旅行を阻止する対策
そして先月24日、米国務省は、出産旅行を阻止するために、B-1(商用目的)とB-2(観光目的)ビザ申請に関する新規定を発表しました。米国大使館・領事館でのB-1またはB-2ビザ申請では、審査官は、申請者の渡米目的が、B-1またはB-2ビザの許容範囲であるかを審査しますが、新規定には、出産のためにアメリカに渡航を希望する者にB-1またはB-2ビザを発行することはできないと明記されています。つまり、出産はB-1またはB-2ビザの許容範囲ではないことを明確にした訳です。
そのため、審査官は B-1または B-2ビザ申請者がアメリカで出産する疑いがあると確信した場合、申請者が、子供を出産することが渡米目的ではないことを立証できない限り、ビザの発給を拒否することができるようになりました。
なお、新規定は、発表のあった1月24日からすでに施行されていますが、対象となるのは、この日以降にアメリカ大使館・領事館にてB-1またはB-2ビザを申請する外国人のみです。現在のところ、すでに B-1または B-2ビザを持っている外国人や、日本人のようにビザウェーバーを利用して渡航できる外国人には該当しません。また、B-1または B-2ビザ以外のビザを申請する外国人や不法入国する外国人にも該当しないため、新規定の効果を疑問視する声があることも事実です。
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