Eビザの申請条件に関しては、これまでも何度かお話したことがありますが、Eビザは、E-1 (条約貿易商) ビザとE-2 (条約投資家) ビザの2種類に分かれています。
E ビザは通商条約・投資条約が基盤となったビザ
E-1ビザはアメリカと申請者の国との間で交わされた通商条約、E-2ビザは投資条約が基盤となって発給されます。 日本もアメリカと通商・投資条約を交わしているので、日本人は E ビザを申請することができます。
通常、L や H などの就労ビザは、米国大使館・領事館でビザの発給を受ける前に、アメリカ国内の移民局から就労の許可を得るために、移民局に請願書を提出します。そして、その申請が認可された後に、大使館・領事館でビザの発給を受けます。一方、E ビザの場合は、ビザ発給の前に移民局から就労の承諾を受ける必要はなく、すべての申請は大使館・領事館で行うことができます。
E ビザの申請者は、条約国の国籍でなければなりません。また、申請者のアメリカでの勤務先(スポンサー)の国籍も申請者と同じ条約国でなければなりません。スポンサーの国籍は、少なくとも50%の株を所有している株主の国籍で決まります。申請者は、管理職(Manager)、または役員(Executive)、企業の運営に必要不可欠な専門知識や技術を持っているスペシャリスト(Essential Employee)でなければなりません。今回のコラムでは、E ビザにおけるスペシャリストの定義について詳しく説明します。
「スペシャリスト」の定義
一般的に専門知識や技術を持っているスペシャリストと言うと、H-1B が思い浮かぶ方が多いと思いますが、E ビザにおけるスペシャリストの定義と H-1B におけるスペシャリストの定義は異なります。
H-1B におけるスペシャリストは、専門職(Specialty Occupation)に就く外国人労働者のことをいい、職務をこなすのに必要とされる分野での学士号、またはそれ以上の学位、あるいは同等の実務経験が必要となります。建築、エンジニアリング、会計など、すでに専門職として確立している役職もありますが、役職が専門職であるかどうか、あるいは申請者が役職に必要な学位あるいは実務経験を持っているかどうかは移民局が判断します。また、労働省が定めている最低賃金の支払いも必要となります。
一方、E ビザにおけるスペシャリストは、企業の運営に必要不可欠な専門知識や技術を持っている人のことを言い、企業の運営に必要不可欠な専門知識や技術の内容、また申請者がその専門知識や技術を持っているかどうかが審査の中心となります。審査では、知識や技術を修得するのに必要な学位や経験、知識や技術の特殊性、給与額、役職の重要性、アメリカ人労働者の有無、申請者の専門性の高さなどの要因が考慮されるため、一般業務労働者(Ordinary Skill Worker)や未熟練労働者(Unskilled Worker)は申請資格はありません。また、日本語能力や、日本の文化を熟知しているということのみでは、一般的にはスペシャリストの基準を満たすことはできません。
このように、E ビザのスペシャリストは、H-1B ビザのように、学位や実務経験、最低賃金に関する法律上の規定はありませんが、逆に、企業の運営に必要不可欠な専門知識や技術を持っていなければ、専門分野での学位を修得していても、また実務経験が長くてもスペシャリストとは見なされません。また、L ビザのように、関連企業での就労経験も必要ではありません。一言でスペシャリストとまとめてしまうと、すべて同じように思いがちですが、ビザのカテゴリによって定義が異なりますので、ビザ申請の際には、申請者がどのカテゴリに該当するか、分析が必要となります。
コラムを通して提供している情報は、一般的、および教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。また、移民法は頻繁に改正があります。提供している情報は、掲載時に有効な情報です。読者個人の具体的な状況に関しては、米国移民法の弁護士にご相談ください。