現在アメリカで生活しているとしても、さまざまな理由から、「出産は日本で」と考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
その場合に問題となるのは、日本で生まれた子供はどのような移民法上のステータスを持ってアメリカに入国できるのかということです。親の国籍や移民法上のステータスによってオプションが異なるため、まず、親の状況から見ていく必要があります。以下、さまざまな状況をケース・バイ・ケースでご紹介します。
1.父親・母親ともにアメリカ市民権、もしくはどちらか一方がアメリカ市民権の場合
父親・母親ともにアメリカ市民権を保持している場合、もしくはどちらか一方の親がアメリカ市民権を保持している場合は、どちらかの親を通じてアメリカ市民権を取得することになります。これは、在日アメリカ大使館・領事館に出生届けを出すことによって、アメリカ市民権を取得できます。アメリカ市民権の証明は、アメリカ政府が発行する出生証明書(Consular Report of Birth Abroad)によって可能となります。もちろん子供がアメリカに入国する際には、アメリカのパスポートを取得している必要があるため、在日アメリカ大使館・領事館では、子供の出生届けは誕生後速やかに行うことを推奨しています。
2. 父親・母親ともに非移民ビザ保持者の場合
非移民ビザ(Non-immigrant visa)とは、グリーンカード保持者が取得しなければならない移民ビザではないという意味で「非移民」と呼ばれますが、いわゆるアメリカに入国する時に入国審査官に提示する「ビザ」のことです。駐在員であれば、LビザやEビザ、学生であればFビザなど、アメリカ滞在時の活動内容によってビザの種類が変わりますが、これらはすべて非移民ビザというグループに分類されます。
Bビザなど、一部を除いて、大方の非移民ビザには、家族が取得できる種類のビザが存在します。ただし非移民ビザ上の家族とは、配偶者および21歳未満の子供のみであり、親は含まれません。また、ビザの種類によって、家族用のビザの名称が違うことに留意してください。主な申請者がF-1ビザであれば家族はF-2ビザ、J-1ビザであればJ-2ビザ、H-1BビザであればH-4ビザ、そしてLビザであればL-2ビザですが、Eビザの場合は、家族も主な申請者と同じ名前のビザとなります。例えば主な申請者がE-1であれば家族もE-1、 主な申請者がE-2であれば家族もE-2となります。
3. 父親・母親がグリーンカード申請途中の場合
両親がグリーンカード申請途中で、日本に滞在中の場合、通常、その申請は在日アメリカ大使館を通じて行っています。この場合、グリーンカードが大使館を通じて発行されるのではなく、大使館から移民ビザという永住権者用の入国査証が発給されます。この入国査証発給前に子供が生まれた場合、グリーンカードの手続きがまだ途中であるため、生まれた子供は、申請者の子供として、途中からでも申請が可能です。子供の誕生が入国査証発給後であったとしても、入国査証の期限内に移民ビザを持つ両親とともにアメリカ入国する場合、子供にはグリーンカードが与えられます。
4. 母親がグリーンカード保持者の場合
子供の出生から2年以内に、母親とともに初めてアメリカ入国する場合、子供にはグリーンカードが与えられます。ただし、母親がアメリカ再入国可能という要件を満たす必要があり、また母親にとっても子供の産後初めてのアメリカ再入国である必要があります。この場合、長期間にわたりアメリカ国外に滞在していることが予想されますので、通常、再入国許可証を事前に取得することが必要となります。
どのパターンも、親子関係の証明が重要な要件の一つです。また、子供がいつから飛行機に搭乗できるかは、アメリカ移民法とは関係なく、航空会社の規則によって決められていますので、事前に確認することを推奨します。
コラムを通して提供している情報は、一般的、および教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。また、移民法は頻繁に改正があります。提供している情報は、掲載時に有効な情報です。読者個人の具体的な状況に関しては、米国移民法の弁護士にご相談ください。