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第12回 学校再開に伴う子どもたちのメンタルヘルスケア

9月に入り、多くの子どもたちの対面授業が始まりました。毎日の規則正しい生活が築かれつつある一方で、自由時間が減少し、集団生活でのストレスやコロナ感染に対する不安などが、子どもの言葉や態度、生活習慣など、さまざまな形で現れます。

自分の経験や気持ちを適切な言葉を使って十分に表現することは、大人であっても難しいものです。言語力や表現力においてはまだ発達段階にある子どもにおいては、コミュニケーションにおける言葉の種類が限られているため、負の感情を認識することや、それらをうまく表現することは困難です。そのため、周囲の大人からは、子どもの SOS が、ぐずりやかんしゃく、または反抗期や体調不良などと、誤って理解されることがあります。

子どもの身体的な成長と精神年齢のギャップは、本人はもとより、家族でさえも、子どもに対する期待や世間の常識などが邪魔をし、気づきづらいものです。例えば、「もう高校生なのだから」という言葉は、子どもの個性やニーズを無視し、当たり前のことができていないという劣等感を無意識のうちに子ども植え付けてしまう結果となり、子どもの肯定的な自己形成の過程に影響を及ぼします。

家族から受ける誤解や理解の欠如は、子どもの心を深く傷つけ、余計に心を閉ざしてしまう原因となるので、ご家庭でのより一層のサポートが必須です。

コロナ禍の学校再開と集団生活におけるストレッサー

家庭と学校での感染対策やコロナに対する考え方の相違

さまざまな情報が溢れる中で、子どもたちは成長しながら常に「自分探し」をしています。得た情報の理解の仕方は私たちの価値観や考え方によって影響されますが、子どもの年齢が低い程、その判断は他人に委ねられ、それらに食い違いがあると、子どもはとても混乱し、その辻褄を合わせるために、無意識に自分を抑えたり、変えたり、犠牲にしたりするようになります。

例えば、A 君は、感染予防意識が高く、家では食事の前には必ず手洗いをする習慣がありました。ところが、学校で手を洗わずに食事をするお友達の前では、自分だけ手を洗うことでからかわれるのが嫌で、だからと言って手を洗わずに食事をすることに抵抗を感じ、結局その日は食事をせずに帰宅しました。お弁当を残した理由をお母さんに聞かれても、「食欲がなかった」としか言えず、お弁当を無駄にしたこと、嘘をついたこと、家のルール(手を洗う)を守らなかったことで、自分が「悪い子」になったと感じるようになりました。

家庭でのコロナ対策をしっかり決めたり守ったりするだけでなく、あいまいなルールを避け、家庭の外で対策法や理解が異なる場合の対応もしっかりと話し合うことで、子どもが自分の判断に自信を持てるようになっていきます。

感染に対する不安

心の不安定さが体に現れることはよく知られていますが、子どもは特に、心の状態を体の症状として打ち明けることが多くあります。おなかが痛いというときには、防衛反応の一種であったり、言葉にならない心の痛みを感じていたり、不安を感じていて、安心できる家族に気にかけて欲しいという気持ちの表れかもしれません。

「みんな学校に行ってるんだから」と自分に言い聞かせ、本当の心の声を無視し続けていると、体調が悪くなることでしか自分の心と体を休める言い訳ができなくなってしまいます。心と体の関係を子どもに丁寧にわかりやすく教えることで、子どもたちも自然と体の不調を頼りに心の声に耳を傾けるようになり、家族や周囲の大人も、心のケアが必要なことに早めに気づきやすくなります。

新しい生活パターンへの対応

新学期が始まってから数週間後に体調を崩すお子さんが比較的多いのですが、その原因の一つに、集団生活に対応する際に起こる気疲れがあるようです。「がんばってね」という言葉がプレッシャーになることもあるので、子どもの状態を十分に観察して、ご家庭で十分に心と体の休養ができるよう、年齢や発達に応じた対応を子どもと一緒に話し合って決めてください。

学校では、子どもたちは校則や宿題の期限、学期テストの合格点など、「こうしなければならない」ことに囲まれています。ご家庭でできる範囲で、子どもの「こうしたい」気持ちを取り入れ、「できた」という体験を繰り返しサポートすると、子どもの心が安定し、「こうしなければならない」ことにもポジティブに向き合えるようになります。

将来への不安

不安定で不確実な経済状況や、今後の流行状況が影響し得る学校の閉鎖の可能性や行動制限などの情報を、子どもたちは学校、家庭、メディアなど、さまざまな媒体から得ています。「体調を崩すと長く学校を休まなければいけない」という中高生の発言をよく耳にしますが、それは勉強に遅れをとることや友人関係への心配が含まれているようです。

数カ月先の将来の見通しさえも立てづらい中で、子どもたちは自分や家族の持つさまざまなレジリエンスを認識しながら成長しています。今現在から離れて将来ばかりを注目しがちになると、不安感が強まります。まずは今現在をしっかりと確立し、安定感が得られる基盤を保つことが最も大切です。

ご家庭でできる子どものメンタルヘルスケア

外でたくさんのストレスを受けた子どもにとって、家庭や家族はその日に起こったことをプロセスしながら安らぎや落ち着きを得たり、心のリチャージをするための重要な役割を果たします。

例えば、大人でも初めて参加するミーティングなどでは、細かいスケジュールが作成され、それらが時間通りに行われることによって、安心感が生まれます。子どもも同じように、今何をするべきなのか、次に何をするのかが明瞭にわかっていると、今現在の行動と気持ちにゆとりが生まれ、落ち着きと集中力が増します。口頭で伝えるよりも、家族で共有できるオンラインのカレンダー、カレンダーのあるスケジュールボード、ホワイトボードなどを利用すると、子どもが参加することができ、効果的です。

無理をすると長続きせず、負担が増え、悪循環になります。一人で抱え込まず、サービスを上手に利用したり、ご自身に合ったストレス解消法や気分転換を取り入れながら、心と体の両方を考慮したコロナ対策を続けていきましょう。

佐野圭子 Ph.D., LMHC, NCC, SAS
メンタルヘルス&キャリアカウンセリング
CCC Counseling & Consulting
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電話:(360) 328-1233
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