精神的・心理的虐待の懸念は、私のところへカップル・カウンセリングにいらっしゃるクライアントさんに最も多くみられます。
でも、必ずしもご本人に虐待の加害者や被害者であるという自覚があるわけではありません。
ご本人同士は、喧嘩が絶えないことやお互いのストレス、相手のうつ症状などを訴えていても、被害者の方のほとんどは「暴力の危険を感じることはない」「こんな優しい部分もある」など、加害者であるパートナーをかばうかのようなお話をされます。
これは文化の違いも影響しているようで、日本で生まれ育った日本人の場合 は「コミュニケーションや価値観のすれ違い」「自分がうまく自己主張ができないから」「自分さえ我慢すれば・・・」「○○さんのところに比べれば大したことない」「きっとまた昔のように・・・」などと、非論理的に意味付けをしがちのようです。
精神的・心理的虐待は、身体に受ける暴力とは異なり、その程度を客観的に測ることが困難です。そのため、虐待をする側もされる側も、その事実や二人の関係に生じ得るダメージをさほど深刻な問題としてとらえない傾向にあります。
状況がエスカレートした時に、やっと事態のひどさを認めざる得なくなるのですが、その頃には、虫歯を我慢できなくなるまで放っておいた時のように、対策が限られたり、より大きな心の痛みや傷が伴うこととなってしまいます。
また、アメリカ人の専門家やサポートセンターなどに相談すると、日本人ならではの価値観やコミュニケーション方法を考慮してもらえないまま、別れることや法的な処置をとることを勧められたというお話もよく伺います。虐待がパターン化して手遅れになる前に、まずはご自身の現状としっかりと向き合い、心と体の安全を確保していくことが大切です。
では、問題が大きくなる前に対処するには、パートナーのどのような行動に注意すればよいでしょうか。
- あなたのことや、あなたの発言を考慮しない自分勝手な行動や言動をする。
- あなたの言ったことや考えに対して挑戦的だったり喧嘩腰になる。
- あなたの提案を受け入れらてもらえず、建設的な会話が成り立たない。
- あなたの話を途中でさえぎる、追及する、すり替える、黙らせる。
- あなたの気持ちや感情、考えや体験談を軽くあしらったり、否定したり、またはそれらが間違っていると言う。
- 話の途中で「君は自分が何を言っているのか、きっとわかってないんだよ」などと言い、あなたの許可なしにあなたの代弁をする。
- 性行為や家事を強要する。
- 以前に交わした約束や決まりごとなどを否定したり忘れたふりをする。
- やきもち、束縛、あなたの予定の管理、お金・人間関係・行動を制限する。
- 脅す。無視する。
- 喧嘩の原因をあなたのストレスや精神状態のせいにする。
- 他の人に対してあなたのことを侮辱するようなことを言ったり、したりする。
- 喧嘩の後や大声を出した後、大げさに優しくする。
また、きつい口調ではなくても、自分本位に物事が運ぶように仕向けるような言動は、お互いに心理的虐待だと気付きづらいこともあります。
例えば、優しく甘えた口調であなたの外出を嫌がったりすることによって、あなたの行動や時間などをコントロールするような場合です。英語のフレーズで注意して聞いていただきたいのは、相手の「Let me tell you…」「Let me do…」「Let me help you…」などの言葉です。これらは、あなたの許可を得ない助言や救助の強要ともとらえられ、あなたを「できない人(自分よりも下)」で「自分はできる人(あなたよりも上)」という無意識または意識的な力関係が根底にあります。結果、あなたの自尊心を下げ、コントロールする側(相手)とされる側(あなた)の上下関係がさらに大きくなってしまいます。
少しでも気になることがあれば、そこから目を背けたりそれらを否定する言い訳をすることなく、ご自身の考えや感情の理解を深めていってください。
佐野圭子 Ph.D, LMHC, NCC, SAS
メンタルヘルス&キャリアカウンセリング
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