ベルビュー・チルドレンズ・アカデミー
清水 楡華(しみず ゆか)さん
14640 NE 24th Street
Bellevue, WA 98007
【電話】 (425) 785-8032
【公式サイト】 ベルビュー・チルドレンズ・アカデミー土曜学校
バイリンガル幼稚園、BCA 現地校(英語サイト)
Willows Preparatory School ミドルスクール現地校(英語サイト)
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文部科学省は新しい学習指導要領で、”子供たちの「生きる力」をよりいっそう育むこと” を打ち出しています。「生きる力」=知・徳・体のバランスのとれた力とし、”変化の激しいこれからの社会を生きるために、確かな学力、豊かな心、健やかな体の知・徳・体をバランスよく育てることが大切” とも言っています。
たくさんの幼稚園や学習教室がこのスローガンを広告に掲げていますが、一体どうすればこれらが育つのでしょうか?
生きる力とは、戦う力のことです。人類は昔から寒さや飢え、病気や天敵と戦い、勝ち抜いてきました。戦うためには己に強くなくてはいけません。己に打ち勝つには哲学が必要です。つまり、生きる力の原動力は、生きるための哲学にあります。子供の年齢に相応した、各家庭の持つ哲学で十分です。大人が少しずつそのお手本や見本を子供たちに見せていかなければなりません。「日本から来たばかりだから、英語はできなくて当たり前。」これではもう戦う前から負けています。アメリカ人以上に英語ができるようになってこそ勝負ありです。「サボって取る100点より、一生懸命勉強して取る80点」の方が価値があり、将来大きな財産になります。いつも自分の目標を持ってそれに向かって戦っていく姿勢にこそ、本物の生きる力が備わるのではないでしょうか。簡単なことではありません。大変なことです。それ故に哲学が必要になってくるのです。
音読や読書を通していろいろな人の哲学を子供に紹介していきましょう。ガンジーの哲学、スティーブ・ジョブズの哲学、イチローの哲学、私の好きな探険家の植村直己さんの哲学など、いろいろあっていいのです。北極圏単独行をした植村さんの「あきらめないこと。どんな事態に直面してもあきらめないこと。結局私のしたことは、それだけのことだったのかもしれない。」という言葉は、私が小学3年の時に読んだ本に出てきました。 今でもそのフレーズを読んだ時のなんとも言えない不思議な感動を覚えています。たくさんの人の哲学は、子供の感性に響き、いつの日かきっと思い出すことがあるはずです。それを本を通して子供たちに紹介してあげてください。子供たち一人ひとりが異なった哲学を心に刻んでいくでしょう。そしてそれが「生きる力」になるのです。アメリカには、昔の日本であったような道徳の授業というものがありません。今盛んに “Character Education” が話題になっていますが、これとは少し違います。道徳、哲学、それらはきっと宗教と信仰によってカバーされているのかもしれません。だからこそアメリカで育つ子供たちには、哲学を紹介する働きかけが大切になってきます。
先月日本に一時帰国した際に、昔の教え子たちに会う機会がありました。くりくりした目の子供たちが立派なお医者様になっていたり、大企業の役職についていたり。でも、一番びっくりしたのは、いつも私のすぐ前に座らされていた男の子が議員バッジを胸に付け素晴しい背広姿で目の前に現れた時でした。彼らが今でも覚えているのは、授業とは全く関係がないお話や楽しく遊んだゲームというのには少しがっかりしましたが、それぞれがどんな事態に直面してもあきらめないで前進し、大きな花を咲かせていました。
教え子たちが私を超えていくのを喜びながら、この教え子たちに恥じないよう、謙虚な気持ちを忘れず、少しずつでもいいから成長していける、そんな人になれたらと思った再会でした。子供たちだけでなく、親としての自分自身が、一人ひとりの指導者が、哲学をしっかりと持ち、未来を作り出すのが教育です。哲学のある教育により、子供たちだけが未来へ生きるのではなく、私たち大人もまた生かされていくのです。謙虚で静かに生かされる戦いに参加してみませんか?
掲載:2013年12月