第11回 感じる心を夕焼けに。

秋の美しい夕焼けが、ここ2、3日、続いています。凛とした冷気の中の夕焼けは、強さと永遠を思わせます。

また見つかった、何が、永遠が、海と溶け合う太陽が。

何年か前に国語の授業で使ったランボーの詩の一節です。何が永遠なのか、永遠がまだほかにもたくさんあることなど、実際に見えないものを見る詩人の感性を学習し、授業での話し合いが大きく広がったことに思いをはせました。

秋の夕暮れが大きな海洋に沈む太陽をイメージさせ、それが抽象化されていく過程は、ランボーの詩が体に刻み込まれているからこそ感じられるものです。どこにでもある平凡な体験がより深い感性を刺激し非凡に変えていきます。

英語と日本語を学習しているバイリンガルの子供たちには、より優れた言葉と文学作品を紹介し与えてあげたいものです。日本語の美しい表現にたくさん触れ、日本語でイメージ化して、言葉の真髄に触れていく国語学習を目指してください。

日本国外で育つと、触れる日本語に限りがありますが、逆に言えば、いいものだけを選ぶよう簡単にコントロールできます。いい文学作品を選び、日本語で感じる感性を身に付けさせてあげましょう。それはすぐには出てこなくても、子供たちの人生において蓄積され、いつか大きな花を咲かせる肥となるに違いありません。 冬休みになるとまた、日本語の音読コンクールがあります。音読暗唱することによって名文を自分のものにしていきます。夕日を見た瞬間にランボーの詩を思い出し、重ねて自分のものとして、感情がより豊かなものになる瞬間を作り出すためにも、どんどん音読暗唱していきましょう。音読は子供たちに日本語の正しい音を見直させ、日本語の音韻とリズムを体得させます。美しい日本語を覚えることで集中力と記憶力を強くしていきます。音読暗唱ですらすらよめるようになると、自信にもつながります。そして何よりも読書は子供の感性、表現力、想像力を高め、人生をより深く生きる力を身に付けさせてくれるでしょう。

そして秋の夕焼けの薄紫色の空の下、皆さんのご家庭に朗読・音読の美しい日本語が響き、そこにご家族のハーモニーが生まれ、子供たちが人生を深く濃く生きていく感性の土台が築かれることを願います。

掲載：2013年11月