第6回 どうしたら作文が上手になるの？

「子供に良い作文を書かせるには？」「どうしたら作文が上手になるの？」と、たくさんの保護者の方から質問されます。

そもそも “良い作文” とは一体どういう作文のことを言うのでしょうか。作文もほかの芸術作品と同じく “人の心に感動を与えるもの” だと思います。職業柄、日本人だけでなく現地校の生徒の作文を読む機会が多くあります。英語、日本語に関わらず、テーマが何であろうと、書き手の感動が伝わってくる文があります。書き手の人間性も伝わってきます。そして、それらが読み手を感動させます。読む人に感動を与える、そんな作文が書けるようになったらどんなに素晴らしいことでしょう。

書くことは感動の出力作業です。それに対して読むことは感動の入力作業です。この二つのバランスが大切です。 つまり、良い作文を書くには、いろいろなものをたくさん読んで、感動を入力しなければなりません。出力ばかり期待して、入力がおろそかになっていないでしょうか。また、本は幅広いジャンルを読ませるようにしてあげてください。英語で感じるために、英語の本も読むようにしなければなりません。英語でも日本語でも読書が必要です。読書という疑似体験の中で子供は感動し、それを入力していきます。

子供の感性を育て、感じる力を身につけさせるには、どうしたらいいでしょうか。一日一つ、どんな小さなことでもいいので、平凡な日常生活の中で発見したり感動したものを親子で分かち合ってください。年齢が小さい時ほど新鮮な驚きや発見が簡単に見つかります。”感動発見ノート” のようなものを作って一日一題、記録していきましょう。先日写真を整理していたら、我が家の “発見ノート” と子供たちの音読を録音したテープが出てきました。アルバムの写真以上に大切な成長の記録であり宝物です。声変わりする前の息子が読んだ音読テープから、公園で遊んだ思い出が鮮やかによみがえってきました。

それから、言うまでもなく本物の素晴らしい芸術と音楽をたくさん体験させてあげてください。美術館や博物館は芸術を大切にする心を育み、静かに鑑賞させる躾をするのに最高の場です。また、ご家庭で幼児には本の読み聞かせ、小学生にはさらに音読、暗唱、書写と広げていく必要があります。 そして、日本食ばかりではなく世界中のおいしい食べ物を食べさせてあげてください。動物の本能でもある「食」は生きる感動の源です。小さい頃から食べるという感動の入力を国際的にし、感じる力も国際レベルにしておきましょう。

このようにバイリンガルの子供たちは、国際的な感動を入力し、そこから見たり、聞いたり、話したり、思ったりしたことを言葉にのせて良い文を作り上げていきます。感性を磨き、心を働かせて書くことが大切です。

それができれば、後は簡単な作文技能の練習と習得です。

作文技術：音読、暗唱、書写を通して文の構成、句読点やかぎ括弧の使い方などを自然に学びます。

テーマ選び：人の目を引くユニークなテーマが必要です。”発見ノート” からも選べます。

観察力：五感を働かせて物事をよく観察します。

表現力：擬態法や擬人法、擬声音や擬態音を使って表現の仕方を工夫します。ことわざ、慣用句などの引用を使うのも良いでしょう。

構成力：始め～中～終わり、起承転結というように文の構成を考えます。4コマ漫画で起承転結の練習をしても楽しいでしょう。

オリジナリティー：書き手の独特の意見、考え方を反映させます。

これらのことを念頭に置いて作文を書くようにします。意見文、感想文、描写作文、創作文、伝達作文などいろいろなジャンルの文を書きこなしましょう。

人の心を動かす文章を書くことは、立派な芸術活動です。良い芸術作品を創り出すために必要なのは、まず感性の鋭い “小さな芸術家” になること。そして次に作品を創る “技法” を習得し、磨き上げること。

ただ「作文」というのではなく、むしろ自己を表現する「芸術作品」として取り組んでみて下さい。

（2013年6月）