アメリカでのお産は、ケアの仕方が日本と大きく異なるところがあります。でも、アメリカでの医療システムと構造がわかっていれば決して怖いことはありません。
アメリカでお産を含めた家庭医として15年以上勤務している経験と、日本とアメリカの両方でお産をした妻の経験をふまえつつ、正常妊娠の場合の妊婦検診からお産まで、アメリカと日本の相違点に注目しながらお話しします。
第1回は、日米のシステムの違いについて、とても重要な点を二つご紹介します。
どの科に診てもらうか?
妊娠すると、日本では産婦人科にかかるのが一般的ですが、アメリカでは産婦人科の他、家庭医や助産師も妊婦検診とお産を行います。
家庭医や助産師は主に合併症の少ない低リスクのお産をすることが多いですが、中には特別に産科研修をして高リスクのお産や帝王切開を行う家庭医もいます。また、妊婦検診、産後検診や小児健診のみを行う家庭医もいますので、予約時に確認されるといいでしょう。
妊娠が高リスクと判断された場合は、産婦人科、または周産期専門医と一緒にマネージメントをしたり、場合によってはお願いすることがあります。地域にもよりますが、自宅出産を希望する場合は、主に助産師がケアすることになります。
医療保険は必須です!
アメリカでのお産で一番気になるのはその費用かもしれません。
日本では、正常妊娠・分娩は保険適用外ですので、基本的には自己負担になります。ただ、出産後に出産育児一時金などの公的支援制度で出産に関する費用をカバーできると言われています。
アメリカでは、妊娠出産に関する費用は一般に医療保険でカバーされます。ただ、医療保険によってはカバーされる内容と自己負担額が異なるので、できる限りカバーされる内容を把握されることをお薦めします。医療保険を持っていない場合は早急に手続きをしましょう。多くのクリニックまたは病院はソーシャルワーカーを通してお手伝いしてくれます。また、多くの病院にはファイナンシャル・カウンセラーがいますので、自己負担額の支払いが難しい場合には相談するといいでしょう。
知っておくといい英単語
- 産婦人科:Obstetrics and Gynecology または OB/GYN
- 家庭医:Family Medicine または Family Practice
- 助産師:Midwife
- 出産:Delivery
- 帝王切開:Ceserean Section または c-section
- 妊婦健診:Prenatal care または Prenatal visit
- 産後検診:Postpartum care または Postpartum visit
- 周産期専門医: Maternal Fetal Medicine specialist
- 自宅出産:Home birth
執筆:近藤洋先生(こんどう・よう)
Providence St. Peter Family Medicine Residency Program, Program Director
University of Washington Department of Family Medicine, Clinical Assistant Professor
北里大学医学部卒。北里大学麻酔科学にて麻酔専門医を取得後、バングラデシュでの医療協力を機に、家庭医への転科を決心し渡米。St. Peter Family Medicine Residency Program で家庭医研修後、ワシントン州スパナウェイの Community Health Care で産科を含めた家庭医として勤務。その後、家庭医研修医の指導医として St. Peter Family Medicine Residency Program に戻り、地域に根ざした医療、臨床及び研修医教育に携わる。2019年より現職。
【公式サイト】www.providence.org
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