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アメリカでの妊娠・出産 第2回:妊娠第1期から出産までの基礎知識

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アメリカでのお産は、ケアの仕方が日本と大きく異なるところがあります。でも、アメリカでの医療システムと構造がわかっていれば決して怖いことはありません。

アメリカでお産を含めた家庭医として15年以上勤務している経験と、日本とアメリカの両方でお産をした妻の経験をふまえつつ、正常妊娠の場合の妊婦検診からお産まで、アメリカと日本の相違点に注目しながらお話しします。

第2回は、妊娠してから出産するまでの検査について、日米の違いも踏まえながら、ご説明します。

もくじ

妊娠期間の呼び方 日米での違い

日本では「妊娠◯ヶ月」という呼び方で診察を進めることが多いですが、アメリカでは「妊娠◯週」と、妊娠週数で説明することが基本となります。

First trimester 妊娠第1期:1〜12週
Second trimester 妊娠第2期:13〜28週
Third trimester 妊娠第3期:28週〜出産

初診はいつ?何をするの?― First trimester 妊娠第1期:1〜12週

妊娠検査キット

「月経がいつも通りに来ない」「吐き気などのつわりの症状がある」などの妊娠を疑った時点で、家庭医、産婦人科または助産師にかかるといいでしょう。

妊娠確定の検査は外来で妊娠検査(尿検査)か薬局で妊娠検査キットを購入して自宅で検査をするのもいいでしょう。

多くの場合、初診は妊娠8週前後から12週前後(妊娠第1期)の間になります。

日本ですでに妊婦検診をされていて、アメリカで継続して妊婦検診をされる場合は、日本での記録を持参することをお薦めします。その際、予防接種記録も持参すると医療機関としても助かります。日本でも英語で記録を作成してくれる医療機関があるので、聞いてみてください。

初診では、今までの経過、既往歴、産歴、家族歴、嗜好歴などのお話を聞くと同時に、初診時の検査をします。医療機関によって異なりますが、当院では看護師が初診時にお話を聞きます。

そして、血液検査や尿検査では、血液型、Rh因子、抗体の有無、貧血、各種感染症(風疹、水痘(水ぼうそう)B型及びC型肝炎、HIV、梅毒、性感染症など)、尿培養、頸がん検診、ドなどの検査をするのが一般的です。

ドラッグスクリーニングと聞かれると、えっと思われるかもしれませんが、アメリカでは社会事情もありドラッグスクリーニングも検査することがあります。

また、出産予定日を決定するための超音波検査は、その日にできる施設とそうでない施設があります。当院では放射線科にお願いしますので、初診日にはできず、改めて放射線科で予約を取って検査を受けることになります。

出産予定日は、最終月経日および超音波の検査結果を合わせて、決定します。

妊婦検診 ― Second trimester 妊娠第2期:13〜28週

この時期は日本とほぼ同じで、4週に一回程度の診察になります。医師の診察時には、体重や血圧測定を行い、胎児の心音を聞き、おなかの大きさを測ることで、赤ちゃん(胎児)の成長具合を見ます。また、毎回出血や下腹部痛の有無、胎動(だいたい20週から感じることが多い)などについて聞かれます。

超音波検査

日本では診察のたびに超音波検査をして胎児の成長具合を見ますが、アメリカではそのような診察は一般的ではありません。その代わり、妊娠18〜20週で、心臓などの臓器、手足や顔など、胎児の解剖学的構造を細かく見る超音波検査を行います。ここでよく見えなかったり、異常がある場合は少し時間を置いてさらに超音波検査を行うことがあります。

また、日本と同じように出生前検査が可能です。これは出産前に胎児に生まれつきの病気がないかどうか、ダウン症候群などの染色体異常などがないかどうかを母親の血液検査で調べるものです。希望者のみになりますが、検査をしたいかどうかは必ず聞かれます。出生前検査にはいくつかの種類があるので、保険が適用されるかをあらかじめ確認することをお薦めします。

妊娠第2期後期におけるその他の検査としては、甘いジュースを飲んで1時間後に血糖値を測る妊娠糖尿病の検査、貧血、梅毒のスクリーニング検査などがあります。

血液型がRh因子陰性の方は、Rhogamという抗体を予防するための注射を妊娠28週に受けます。

妊婦検診 ― Third trimester 妊娠第3期:28週〜出産

妊娠28週から出産までの時期。いよいよ出産前の準備になります!

ストローラー(ベビーカー)やチャイルドシートを買ったり、洋服やオムツを用意したり、忙しいながらも楽しい時期です。

ここからは2週に一回の診察となります。体重も増える時期ですので、お食事と運動に気をつけてほしい時期なのですが、日本と違い、定期的な栄養士などのサポートはほぼありません。医師や看護師にアドバイスを聞くか、妊娠糖尿病や体重過多と判断された場合は栄養士に紹介されたりします。

妊娠36週では、膣、肛門のB郡溶連菌の培養検査と、リスクが高ければ性感染症の検査があります。これが陽性の場合は出産直前に抗生剤を使います。特に合併症がなければ、出産まではこれが最後の検査になります。36週以降は出産まで週一回の診察になるので、忙しくなります。

そしてもう一つ大切なのは、出産前に赤ちゃんの小児科の先生を決めておくことです。家庭医にかかっている場合は、そのまま家庭医の先生が赤ちゃんのケアもしてくれます。産婦人科や助産師にかかっている場合は、小児科の先生を探して、連絡しておきましょう。

妊娠中の予防接種「え、こんなにするの?」

アメリカでは、妊娠中の予防接種を積極的に行なっています。

妊娠中は、麻疹(measles)や風疹(rubella)などの生ワクチンは接種できませんが、インフルエンザや COVID-19の予防接種は積極的に勧められます。

妊娠27週以降には、3種混合ワクチンのTdap(破傷風、ジフテリア、百日咳)の予防接種を勧められます。これは主に百日咳を予防するためです。妊娠中にTdapを始めて以来、新生児の百日咳による死亡が激減したという報告があります。

また、最近ではRSV(呼吸器合包体ウイルス)の予防接種が始まりました。これは新生児の重篤な肺炎を予防するためのもので、妊娠32週から36週までに受けます。

予防接種は日本にはなかなか馴染みの薄い習慣ではありますが、安全性も確立されており、筆者としてもお薦めします。

以上、妊婦検診についての主なポイントをまとめてみました。次回は病院での出産についてお話しします。

執筆:近藤洋先生(こんどう・よう)
Providence St. Peter Family Medicine Residency Program, Program Director
University of Washington Department of Family Medicine, Clinical Assistant Professor
北里大学医学部卒。北里大学麻酔科学にて麻酔専門医を取得後、バングラデシュでの医療協力を機に、家庭医への転科を決心し渡米。St. Peter Family Medicine Residency Program で家庭医研修後、ワシントン州スパナウェイの Community Health Care で産科を含めた家庭医として勤務。その後、家庭医研修医の指導医として St. Peter Family Medicine Residency Program に戻り、地域に根ざした医療、臨床及び研修医教育に携わる。2019年より現職。
【公式サイト】www.providence.org

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や医療アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関するご質問は、直接ご相談ください。

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