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アメリカの健康診断(2) 成人の健康診断

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大人になってから、定期的に健康診断を受けていますか?

アメリカでは、成人の健康診断(Preventative visit、Wellness visit、Health maintenance exam、Annual physical)は、年に一回行うことが一般的です。

健康診断は、家庭医(family medicine)、または内科医(internal medicine)のプライマリケア医、一部の産婦人科(obstetric and gynecology)の専門医によって行われ、多くの保険プランで365日に一度カバーされています。ただし、例外もあるので、受診前に保険プランを確認するとよいでしょう。

今回は、成人の健康診断の大きな7つの目的をご紹介します。

1. 病歴・家族歴・生活習慣などを確認する

特に医療機関にかかることが少ない方や、新しく受診する患者にとって、定期的に健康診断を受けることは、かかりつけ医に自分の既往歴(きおうれき:medical history)や健康状況を理解してもらう機会になります。

これまでにかかった病気の記録、予防接種の記録、その他の検査結果、家族歴の詳細のメモを持参することをお勧めします。

2. 疾患のスクリーニングを行う

アメリカの健康診断の多くは、米連邦保健福祉省(US Department of Health and Human Services)によって定められている米国予防医学作業部会 United States Preventative Services Task Force(USPSTF)の推奨に基づいています。

USPSTF は、予防医療のエビデンスを総括しており、予防のために行うべき方策と推奨度を提示しています。現在、12カテゴリ、133のトピックに渡るエビデンスに基づいて、5つのレベルの推奨を提示しています。

【グレード】
A: Strongly recommended 強く推奨する
B: Recommended 推奨する
C: No recommendation 推奨なし
D: Not recommended 推奨しない
I: Insufficient evidence エビデンスが不十分

健康診断では、一般的に推奨度が高い Grade AやBの内容を行い、医療保険改革法(Affordable Care Act)による個人の医療保険がカバーするように指定されています。定期的に更新されるため、健康診断の際に勧められるスクリーニングが変わることがあります。

年齢や性別、家族歴、臓器(子宮、乳組織など)などから判断されるリスクによって異なりますが、子宮頚がん、乳がん、大腸がん、肺がんなどのスクリーニングの必要性や検査方法について相談します。日本では、人間ドックなどで胃カメラを行うことが多く見受けられますが、アメリカでは胃がんのスクリーニングとしては推奨されておらず、希望しても医師から勧められない場合があります。また、生活習慣病である高血圧、糖尿病や高脂血症などのスクリーニングも行われることがあります。

性行為によって感染する性感染症(sexually transmitted infection: STI)のスクリーニングも、健康診断の時に受けることができます。正確にその必要性と検査方法について相談することができるように、性行為を持った相手や具体的な行為について聞かれることがあります。プライバシーが保証されているため、性感染症や避妊などについて疑問点や不安があれば、気軽に相談してみて下さい。

3. 予防接種を受ける

米国の予防接種は、CDC(Centers for Disease Control and Prevention)の Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)が推奨するスケジュールに従って行われます。

成人の予防接種スケジュールは19歳から始まり、三種混合(Tetanus、diphtheria、pertussis Tdap or Td)、帯状疱疹(Zoster)、肺炎球菌(Pneumococcal)、髄膜炎菌(Meningococcal)、A型・B型肝炎(Hepatitis A and B)、インフルエンザウイルス(Influenza、flu)、コロナウイルス(COVID-19)などが含まれます。

年齢や基礎疾患、その他リスクに従って推奨されるものが異なります。

4. 健康増進、生活習慣の改善により、病気を防ぐための相談をする

運動や食事、睡眠、タバコや飲酒、他の薬物の使用について相談する良い機会です。医療機関で毎年体重を測り、その推移を見ることで、生活習慣を振り返る機会にもなります。

生活習慣により、健康診断で行われるスクリーニング検査が変わることがあるので、この振り返りはとても大切です。

また、多くのプライマリケア医は行動変容のコーチングをしたり、手助けになる資料、ウエブサイトや携帯アプリ、必要があればカウンセリングや専門機関を紹介することができます。

5. メンタルヘルスのスクリーニングを受ける

受診時に Two-question screening test や Patient Health Questionnaire and General Anxiety Disorder(PHQ9/GAD7)という質問表を通して、うつ病や不安のスクリーニングを行なうことがあります。

メンタルヘルスは、全ての健康に影響する大切な要素です。スクリーニングに引っ掛からなくても、気分が思わしくない場合は相談できます。

6. その他の健康相談をする

受診前に話したいことを大まかに考えておくといいでしょう。もし、時間のかかる相談だったり、明らかに健康診断外の内容であれば、改めて予約することを勧められることがあります。

7. かかりつけ医との関係を築く

毎年継続してかかりつけ医の診察を受けることで、自分の価値観、健康についての意見や希望について、医師も理解を深めることができます。

患者さんの身体だけでなく、心理的、社会的立場などを総合的かつ全人的に知った上でケアすることを大切にしている家庭医と、良い関係を築くようにしましょう。

参考文献
  • CDC Adult Immunization Schedule
  • USPSTF: Published Recommendations
  • Heidelbaugh JJ. The Adult Well-Male Examination. Am Fam Physician. 2018 Dec 15;98(12):729-737. PMID: 30525354.
  • Paladine HL, Ekanadham H, Diaz DC. Health Maintenance for Women of Reproductive Age. Am Fam Physician. 2021 Feb 15;103(4):209-217. PMID: 33587575.

執筆:西連寺智子先生(さいれんじ・ともこ)
University of Washington Department of Family Medicine, Associate Professor
Family doctor at UW Primary Care at Northgate Clinic and Northwest Hospital
米国マサチューセッツ州で幼少時代を過ごし、12歳で日本に帰国。国際基督大学卒業後、岡山大学に学士編入。卒業後、福岡県にある飯塚病院での2年間にわたる初期研修を経て、ピッツバーグ大学メディカルセンターで家庭医のレジデンシーとチーフレジデントを行う。同大学で医学教育修士課程とファカルティデベロップメントフェローシップを終え、現在はワシントン大学医学部(University of Washingon School of Medicine)で家庭医療の准教授として医学生の指導を行いながら、UW Medicine のノースゲート・クリニックと Northwest Hospital で家庭医として勤務している。

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や医療アドバイスではありません。読者個人の具体的な状況に関するご質問は、直接ご相談ください。

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