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第6回 赤ちゃんを作ろう

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ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士
押尾 祥子さん

Sachiko Oshio, CNM, PhD, ARNP

Nadeshiko Women’s Clinic

【メール】 info@nadeshikoclinic.com
【公式サイト】 www.nadeshikoclinic.com
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いろいろな理由で、赤ちゃんが欲しいのになかなかできない人が、今増えています。
そんな時に、自分の身体のことをもう少し理解していると、妊娠しやすくなることがあります。なでしこクリニックでは身体のリズムを知るためのクラスを開いていますが、この稿ではその概要を説明してみましょう。

妊娠するためには、いろいろな条件を整えなければなりません。男性側では、正常な精子が正常な数だけ作られていること、性交が可能なこと、感染症がないことなどが条件です。男性の検査は比較的簡単で、3日ほど禁欲した後の精液を顕微鏡下で検査すると、基本的な情報が得られます。

女性側は、排卵が起こること、卵管が機能していること、子宮頚管が精子を通しやすくなっていること、子宮の内膜が受精に適した状態になっていること、受精卵がしっかり着床するまでホルモンのサポートがあること、着床をさまたげる感染症、筋腫などがないことなどが条件です。不妊症の検査というのは、1つ1つ順を追って検査していくのですが、高価な検査を受けなくても、ある程度のことは自分でわかります。それが、”Natural Fertility Awareness Method” といって、ホルモンが出すサインを自分で確かめる方法です。これは、基礎体温・子宮頚管粘液・子宮頚管変化の情報をあわせて判断します。

基礎体温

ホルモンの変化によって、女性の体温は微妙に上下します。この上下を測ることにより、ホルモンの変化を推測するのが基礎体温法です。体温というのは1日の中で大きく変化し、運動することによって上がり、深い眠りにつくことによって下がり、朝は低く、夕方は少し上がるという傾向があります。朝1番の体温でも、目覚めるのが1時間遅いと体温は高めに出ます。逆に1時間早いと低くなります。いったん起きてしまうと、活動レベルの影響で体温が変化し、ホルモンによる微妙な変化は隠されてしまいます。そこで、自分のホルモン周期を知るための基礎体温は、3時間以上深く眠った後、動き始める前の、毎日同じ時間に測ります。

原則的には、基礎体温には2つのホルモンの影響が反映されています。エストロジェンは体温を下げ、プロジェステロンは体温を上げます。生理が終わって身体が排卵の準備をしている時にはエストロジェンがだんだん多く出るようになり、排卵の直前にピークとなります。その結果、生理の後は低温期になり、排卵の日にはいつもより少し低めの温度になる人が多いです。プロジェステロンは、排卵が起こった後に卵巣にできる、黄体から出されるホルモンです。したがって、高温期になったということは、排卵がすでにあったということになります。

頚管粘液

頚管粘液というのは、子宮の入り口にある分泌腺から出される粘液です。粘液がない時期や、ベトベトした時期には、精子は硬い粘液に妨げられて子宮に入ることができません。一番良い状態の頚管粘液は、卵白によく似た状態で、納豆のようにトロっと糸をひきます。この状態の粘液の場合、精子は子宮内に簡単に入ることができます。自然はうまくデザインされていて、排卵日が近づくと、粘液が次第に卵白状に変わって来ます。これもエストロジェンの影響です。排卵が済んでしまうと、その日のうちに頚管粘液も出なくなります。

子宮頚管変化

同時に子宮の頚管自体も変化します。子宮の入り口にあたる頚管は、普段は膣の一番奥にある、コロっとした感じのもので、ちょうど鼻の頭くらいの硬さです。子宮口そのものは少し凹んでいる感じで、はっきりわからないことがほとんどです。ところが、排卵が近づいてくると、頚管は次第に柔らかくなり、唇ぐらいの柔らかさになります。子宮口は5ミリぐらい開き、あきらかに口が開いているというのがふれた時にわかります。また、子宮自体も少し奥の方にのぼり、膣が深くなった感じになります。排卵が終ったとたんに子宮はもとの位置にもどり、子宮口も閉じてしまい、硬くなります。

これらを総合してみると、まず、粘液と頚管の状態から排卵が近いということがわかります。実際に排卵があると、その後、高温期に入るのでわかります。これを利用して、避妊をしたり、妊娠を試みたりします。

妊娠を避けたい時には、安全期だけに性交をします。高温期の後に起こった生理の初日から5日間、頚管粘液の分泌がない日の夕方までが最初の安全期です。排卵の前後は避け、今度は高温期に入って3日めの夕方から、頚管粘液のピークのあと4日めの夕方からがその次の安全期になります。

逆に、妊娠をしたい時には、排卵の前から排卵の当日ぐらいまでに性交をします。男性の精液が正常な時は、トロっとした子宮頚管粘液が出てきたら、その日から排卵の日まで毎日性交をします。検査の結果、男性の精子が少ないとわかっている時は、1日置きに性交をします。

女性も若い時は頚管粘液の量が多く、何日もその状態が続きますが、30才を過ぎたころからホルモンバランスが変わりはじめ、理想的な粘液の期間が1日か2日しかないこともあります。その上、男性の精子が少ない場合は、次のようにタイミングを考えましょう。頚管粘液の卵白状の日が1日ぐらいしかない場合、その日に性交をします。状態の良い日が2日ある場合は、1日目に性交します。3日ある場合は1日目と3日目にします。

生理の開始から排卵までの時期は人によって差がありますが、いったん排卵してしまうと、生理が来るまでの時間は黄体の寿命によって決まるので、それほど差がありません。いったん高温期になると、妊娠していなければ生理は14日から16日後ぐらいに起こります。もし、高温期が18日以上続いても生理にならない場合には、妊娠している可能性があります。市販の妊娠テストをしてみましょう。

こうした情報を一枚のグラフにまとめると、自分のリズムがわかります。記録表は
www.fertilityplus.org/faq/bbt/bbtdownload.html
からダウンロードすることができます。規則通りに2層性にならなかったり、排卵日がはっきりしなかったり、排卵日がはっきりわかっているにも関わらず、3ヶ月以上妊娠できなかったりした場合は、診察を受けてみて下さい。なでしこでも、2~3ヶ月分の記録があれば、今後、どのようにしたら良いかという相談を受け付けています。

(掲載:2001年6月)

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