ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士
押尾 祥子さん
Sachiko Oshio, CNM, PhD, ARNP
Nadeshiko Women’s Clinic
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【公式サイト】 www.nadeshikoclinic.com
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「不妊症の検査や治療にはまだ踏み切れないけれど、試しているうちに時間ばかりたっていく」というような場合、まず自分でできることがいくつかあります。1つには、自分の身体のリズムを把握して、タイミングをきちんとあわせてみることです。それについては、こちらをご覧ください。
また、不妊症の原因として、かなりの割合で男性側に問題があります。大人になってから大きな病気をしたため精子の数が異常に少なかったり、形や機能に異常がある人もいます。最近は、「環境ホルモンの影響で精子の数が20年前に比べるとかなり少なくなっている」とも言われています。男のプライドが邪魔をして、「妻が検査に行くのはサポートするけれど、自分は絶対に検査したくない」という男性もいて、子供が欲しい女性を悲しませることもあります。
最近、卵巣の機能と精子の機能について、自宅で簡単にできる 検査キットが発売されています。専門家のところで受ける検査に比べて少し精度は落ちますが、「本当に専門家のところに行かなければならないのかどうかわからない」「はずかしいから検査には行きたくない」「まだ、決心がつかない」という人には便利です。
女性の卵巣が排卵しにくくなってきているかどうかは、生理から3日目の朝に卵胞刺激ホルモンを調べるとわかります。『First Response Fertility Test for Women』 という女性用キットは、尿検査でこのホルモンが正常なのか、あるいは異常に高くなっているのかを調べるものです。生理開始の日を1日目と数えて、3日目の朝の最初の尿を検査します。市販の妊娠検査や排卵日検査と同じように、キットの中の検査用スティックのキャップをはずし、そこに5秒だけ尿をかけます。あるいは、カップに早朝の尿を採って、そこにスティックの先端を5秒だけ浸します。キャップをつけなおし、判定窓を上にして平らなところに置き、そのまま30分待つと結果が出ます。
検査の結果、2本の線が出ます。基準線が出なければ、検査は無効です。検査線と基準線を比べて結果を判定します。基準線よりも検査線の方が薄ければ、卵巣機能が正常である可能性が高いことを意味します。もし、検査線が基準線と同じ、あるいは濃い色の場合、卵巣機能が落ちてきている可能性があります。これは、卵巣の反応が悪いために卵胞刺激ホルモンがたくさん出ている状態ということです。つまり、それだけ妊娠が難しくなってきているのです。専門家のところで詳しい検査を受け、必要なら治療することが勧められます。あまり長く待ちすぎて卵胞刺激ホルモンの値が一定の数値を超えてしまうと、体外受精も無理になってしまう可能性があります。
男性用のキットは、『Micra Sperm Test』 というものがあります。これは、精子の数や動きを顕微鏡で見るものですが、きちんと判断できるようになるのは、少し難しいようですので、専門の検査室に頼んだ方が良いでしょう。「不妊症の専門医にはまだ行きたくない」という場合は、家庭医や泌尿器科でも検査を受けられます。
不妊症の原因はさまざまです。前述の検査では卵巣の反応と精子の数はわかりますが、これでは下記のことなどはわかりません。
女性: 卵管が閉塞している、年齢のために卵子の質が悪くなっている、子宮の頚管粘液が足りない、黄体ホルモンが足りない、など
男性: 勃起や射精能力、また、卵子の中に入る能力など
したがって、この検査で正常な結果が出てもなかなか妊娠できない場合は、他の原因の検査が必要かもしれません。35歳以上なら6ヶ月、35歳以下なら12ヶ月にわたってタイミングを合わせてみても妊娠しない場合、あるいは、生理が飛んだり、来なかったりする場合は、専門家の検査を受けてみましょう。
(掲載:2007年6月 更新:2010年6月)