ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士
押尾 祥子さん
Sachiko Oshio, CNM, PhD, ARNP
Nadeshiko Women’s Clinic
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ヒトパピローマ・ウイルスは、皮膚や粘膜を傷つけ、細胞の変化を起こします。ウイルスの種類によって皮膚への影響が異なります。手や足の裏にイボを作ったり、性器にカリフラワー状の突起を発生させたり、あるいは、子宮頚ガンを引き起こしたりする種類があります。皮膚のイボや、性器の突起の原因になるウイルスは、ガンを引き起こすことはしません。子宮頚部の細胞変性を起こすウイルスにも30種類ほど違うタイプがあり、悪性化する可能性の高いものと、そうでないものがあります。
風邪のウイルスが、風邪をひいている人に接することでうつるように、ヒトパピローマ・ウイルスも、そのウイルスに感染している人に接することでうつります。普通に暮らしていれば、誰でも何回か風邪をひくものです。それと同じように、性行為をしたことがある人は、大概ヒトパピローマ・ウイルスに感染したことがあると言えます。
薬を飲まなくても自分の免疫力で風邪が治るのと同じように、ヒトパピローマ・ウイルスも自分の免疫力でなおる場合がほとんどです。きちんと食事をし、睡眠をとり、運動をしていれば、免疫力が上がります。一番いけないのがタバコです。タバコを吸うとウイルスを排除する力が落ちて、ガンに発展する可能性が高くなります。
ヒトパピローマ・ウイルスに感染しても自覚症状はまったくないので、自分ではわかりません。パップスメアの検査の時に子宮頚部から取った細胞を同時に検査してもらうと、ウイルスの有無と、そのウイルスがガンに関係する種類かどうかを検査してもらうことができます。
30歳未満の女性では、ヒトパピローマ・ウイルスを保持していることが普通で、そのほとんどが自然治癒するため、細胞の異常がパップスメアで見つからないかぎり、ウイルスの検査は行いません。パップスメアで細胞の異常が認められた場合には、検査や治療の方法を決めるために、ウイルスの検査も追加で行います。
ヒトパピローマ・ウイルスの予防接種もあります。予防接種は3回のシリーズで、それを全部受けると、ガンを起こすタイプのうちの2種類、性器の突起を起こすタイプのうちの2種類に対して免疫をつけることができます。
すでに性行為をしていて、ヒトパピローマ・ウイルスに感染している場合には、予防接種はあまり意味がないでしょう。また、結婚していて他に性的な接触の無い場合も、新しいウイルスにさらされることがないので、予防接種は必要ないでしょう。まだ性行為をしたことのない、若い女性の場合には、予防接種を受けることによって、将来の子宮頚ガンをある程度減らすことができます。ただし、予防接種を受けたからといって、子宮頚ガンにならないわけではありません。予防接種に含まれていないヒトパピローマ・ウイルスに感染して、ガンになることもあるからです。したがって、予防接種の有無にかかわらず、パップスメアを定期的に受けることが必要です。
(2014年2月)