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第7回 妊娠初期の心配ごと

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ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士
押尾 祥子さん

Sachiko Oshio, CNM, PhD, ARNP

Nadeshiko Women’s Clinic

【メール】 info@nadeshikoclinic.com
【公式サイト】 www.nadeshikoclinic.com
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基礎体温をつけている人や、生理が規則的に来る人は、生理の来るはずの日から2日ほど過ぎた時点で妊娠がわかります。最近の妊娠検査は精度が高く、この時点で陽性に出ることがほとんどです。もしも妊娠しているのに早すぎて陽性に出なかったり、色が薄かったりした場合は、1週間待てば陽性とはっきり出ます。

生理の予定日まで待たなくても、乳首が急に敏感になったり、基礎体温が高温期よりも更に高くなったりし、自分で妊娠がわかる人もいます。とにかく眠くなり、まったく仕事が出来なくなったという人もいます。膀胱炎かと思うほどトイレが近くなり尿道口が敏感になり、それが妊娠の最初の兆候だったという人もいます。

生理が2-3日遅れたために妊娠がわかり、大喜びで産科に電話すると、「そうですか、じゃあ、12週になったら来てください」とあっさり言われて、せっかくはりきっていたのにがっかりすることがあります。これは初期には流産が非常に多いため、無駄にいろいろな検査をしたくないという理由のようです。しかし、妊娠初期は赤ちゃんの脳や手足が形成される大事な時期です。また、流産の可能性も含め、なにかと不安なもの。なでしこではできるだけ早く予約を取っていただき、いろいろな質問に答えるようにしています。

昔は生理の来るはずの日に調べられるような精度の高い検査方法が普通に手に入らなかったのでわかりませんでしたが、実は初期の流産というのは非常に多いのです。はっきりした統計はありませんが、30%とも50%とも言われています。ちょっと生理が遅れて今月は重かったな、という場合に初期の流産である場合があるのです。妊娠を気にしていない人は気がつかないことが多いのですが、少しでも早く妊娠しようと待ち構えている人や、不妊の心配をしている人は、頻繁に調べるために初期の流産がわかってしまうわけです。また、流産は年齢が進むにしたがって多くなります。35歳を過ぎたころから妊娠しにくくなってきますが、妊娠してもそれが継続しない確率も増えてくるのです。初期の流産はほとんどが、染色体異常など胎児に問題があったために正常に分裂成長ができないことが原因と考えられています。お母さんが運動したからとか、何を食べたからというわけではないのです。

妊娠の初期には出血が起こることがよくあります。流産に至ってしまう出血も多いですが、その他の原因による出血もあります。一番よくみられるのは、胎盤が子宮に根をおろすときに起こる着床出血。これは次の生理の予定日ぐらいに起こることが多いため、生理と良く間違えられてしまい、今月の生理はずいぶん軽かったな、と思うとそれが妊娠だったりします。また、妊娠すると、子宮や膣が充血し、ちょっとした刺激で出血しやすくなります。セックスの後に出血がある場合は、これが原因のことが多いようです。性病がある場合、子宮の頚管がただれているため、出血しやすくなります。ポリープという良性の腫瘍が頚管にできると、やはり出血します。まれに、胞状奇胎という異常妊娠でも出血がよく起こります。

出血があり、同時に下腹部や腰が痛くなるのは流産になる可能性が高いでしょう。週数にもよりますが、超音波や血液検査や内診をして妊娠が継続するか、流産になるか、あるいは他の病気なのかの診断をします。一番怖いのは子宮外妊娠で腹腔内に大出血を起こすことなので、妊娠反応が陽性で出血がある時は、超音波や内診で子宮外妊娠でないことを確認します。しかし、2-3回検査に通わなければ診断がつかないこともあります。

6週ぐらいまでの流産は、手術をしなくても、自然に流れてしまうことが多いので、様子をみながら待つのも一つのやり方です。そうした場合、子宮の頚管の中を胎児が通る時、2時間ぐらいはひどい痛みと出血がありますが、それ以後は楽になるのが普通です。痛みや出血は怖いので、手術で麻酔をかけて処理してしまったほうが良いという人もいます。こうした手術は助産婦は普通はできないので、医師が病院の手術室で行います。入院は必要なく、日帰りでできる処置です。

流産の兆候もなく、順調に妊娠が進むと、今度はつわりに悩まされます。軽い人、重い人、食べたくなる人、食べられなくなる人と、現われ方はさまざま。また、始まる時期もまちまちで、4週からはじまってしまう人もいれば、7週まで始まらない人もいます。終わる時期は普通12週から14週前後といわれますが、17週ぐらいまで吐き気があるという人がかなりいます。この原因ははっきりしていませんが、胎盤の出すホルモンに関係があることはわかっています。双子の場合や胞状奇胎の場合はホルモンの量が多く、つわりもひどいことが知られています。

吐きそうで歯磨きができなくなる、流しの匂いや冷蔵庫の匂いががまんできない、ごはんの炊ける匂いがいやだ、料理ができなくなる、などの苦情は良く聞きます。これなら食べられるというものは人によって違いますが、一般的に果物類、氷、クラッカー、炭酸水などが好まれるようです。空腹時にひどくなることが多いので、寝るときもそばにクラッカーと水をおいておき、朝、トイレに立つ前に何か口に入れると良いようです。

ひどいつわりは本当につらいものです。何も食べられず、飲み物も口に入れられず、眠れず、吐く物がなくなっても吐きつづけ、どんどん体重が減って脱水症を起こしてしまいます。そうなると点滴で水分を補わなければなりません。それより軽い場合は、ビタミンB6を100mgほどとUnisomという睡眠薬と組み合わせて朝晩2回飲むと楽になる場合もあります。生姜も吐き気に効くことが昔から知られており、カプセルに入った生姜の粉末150mgを1日に3回から4回飲むと良いといわれています。また、生姜汁を料理に使うことも効果があります。普通の薬局で市販されているSea Bandという手首にあるつぼを刺激する腕輪が良いという人もいます。蛋白質を充分補うとつわりが早く良くなるという説もあり、この説を説く人はEnsureという栄養補給剤を毎日飲むと良いと言います。

(掲載:2001年9月)

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