サイトアイコン junglecity.com

シアトルでの妊娠出産ガイド その1 「妊娠出産と健康保険について」

pro_women_oshio

ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士
押尾 祥子さん

Sachiko Oshio, CNM, PhD, ARNP

Nadeshiko Women’s Clinic
15935 NE 8th Street, A-104, Bellevue, WA 98033
【メール】 info@nadeshikoclinic.com
【公式サイト】 www.nadeshikoclinic.com
詳細プロフィールはこちら

※妊娠出産の際にかかる費用は、利用する病院や保険の契約内容、主治医の方針、そしてそれぞれの症状によって大きく異なります。従いまして、ここに示した数字は、あくまでも目安とお考えください。

妊娠しようと思ったときに、医療費の高いアメリカで、まず、気になるのが保険です。ここでは、旅行保険、個人で加入した保険、会社や大学を通して加入した保険、医療保護、について、妊娠、出産の際に知っておいた方が良い注意事項を書いてみます。

旅行保険

基本的には、日本で加入してきた旅行保険の類は、妊娠に関する医療費を払ってくれませんので、ご注意ください。ただし、中には妊娠・出産費用を含む契約内容の旅行保険もありますし、妊娠の22週までなら費用を支払うという契約内容の旅行保険もあります。ご自分の保険が妊娠出産に対応するかどうか、利用手引書をよく読んで内容を確認しておくと良いでしょう。

妊娠に関する医療費には、不妊症治療・流産・子宮外妊娠による出血・中絶手術・妊婦検診・出産入院費用・帝王切開手術費などが含まれます。一例として、妊娠初期にアメリカで旅行中に流産になってしまったとします。流産で手術が必要になると、2011年の例で、血液検査・超音波・麻酔・手術・薬などを合わせて3,500ドルぐらいの費用がかかりました。この人の場合は普通の旅行保険だけだったため、妊娠に関係する医療費は一切支払ってもらえませんでした。また、旅行中でかかりつけの産科を利用できなかったり、夜間や週末に出血が起こったために救急室を利用したとすると、さらに1,000ドル程の追加費用がかかる可能性があります。

個人で加入する健康保険

無保険、あるいは、旅行保険だけの状態から、新しく個人で健康保険に加入した場合についてご説明します。妊娠する前に保険に加入すれば、なんの問題もありません。契約内容に従って規定の免責額(自己持ち出し分)を満たせば、それ以降に妊娠・出産にかかる費用を契約した率(70%、100%など)で保険が支払ってくれます。また、妊娠途中で新しい保険に買い換えた場合でも、新しい契約内容に従って保険が支払ってくれます。

注意しなければいけないのは、これまで妊娠・出産に対応する保険を持っていなかった人が、妊娠してから新しく個人で健康保険に加入した場合です。契約書に署名した時点で既に妊娠していた場合、妊娠中にかかる費用と出産時にかかる費用について、扱いが異なります。妊娠が判明してから加入した場合でも、ワシントン州では妊娠中にかかる費用については支払ってもらえるのが普通です。ところが、出産時にかかる費用については、保険を購入した日から9ヶ月間の間は支払ってくれないのが普通です。つまり、出産費用については妊娠してから保険に入ったのでは遅いのです。出産時にかかる費用は、15,000ドルから20,000ドルほどになる場合が多いので、妊娠途中から保険に入る意味があまりないと思われる方も多いと思います。ただし、出産費用を払わないという保険でも、妊娠にまつわる合併症で治療が必要になった場合は手術費などを負担してくれることもあるので、契約内容をよく確認しておきましょう。

出産時の費用は別にして、妊娠中にかかる費用には、妊婦検診・血液検査・超音波検査などがあります。ワシントン州では、妊娠が判明してから加入した場合でも、こうした費用は保険が支払うよう定められています。ただし、免責額(自己負担分)が高額な場合、初期の血液検査、超音波検査などは、その範囲内で全額自己負担というところが多いようです。いったん免責額を支払い終えると、中期以降の超音波・血液検査などは、保険の契約内容にしたがって、70%から100%支払ってもらえます。

初診が全額自己負担になったと仮定して、その費用についてご説明します。妊娠の情況・病院・主治医や助産師の方針によってかかる費用がかなり異なります。基本的に全員が行う血液・尿検査、子宮ガン検査だけなら300ドルぐらいですみます。その他に、初診料が200ドルぐらいかかる場合もあります。生理不順で予定日がはっきりしなかったり、出血があって流産の可能性がある場合などで超音波検査が必要になると、追加で300ドルから1,000ドルほどかかります。また、任意でダウン症などの遺伝疾患の検査を行うと、超音波・血液検査・遺伝相談などを含めて、1,000ドルから3,000ドルぐらい追加費用がかかります。

任意の検査については支払ってくれない保険もあるので、検査に同意する前に保険会社に確認しましょう。問い合わせる際には、Diagnostic code(検査を必要とする診断の名前と番号), CPT code(特定検査項目の番号)が必要ですので、医師や助産師のオフィスでこうした情報をもらってから保険会社に電話して問い合わせてみましょう。保険が支払わない項目の場合には、自分でその分を払っても免責額から控除されません。

会社や大学を通して加入する保険

会社や大学を通して加入する保険の場合は、妊娠を既往症と扱わないため、妊娠途中から加入しても大丈夫なものが多いようです。また、同じ会社内でも、異なる保険を複数選ぶことができる場合があります。妊娠・出産をする可能性のある人は、ベネフィットの内容をよく比較して、少し掛け金が高くても、妊娠出産費用の支払い率の良いものを選んだ方が良いかもしれません。利用手引書をよく読み、わからなければ会社の人事部で確認してもらいましょう。

医療保護 『Medicaid』

ワシントン州では、保険に入っていない妊婦のために、『First Step – Medicaid』 という保険があり、所得などの条件があえばアメリカ人でなくても申請することができます。ただし、何年にアメリカに来たか、仕事をしているかなど複雑な条件がある上、連邦政府・州政府の財政が逼迫しているため、条件が頻繁に変更しますから、申請してみないと審査に通るかどうかわかりません。ParentHelp123 というウェブサイトに収入の条件などが説明してあり、オンラインで申請することもできます。

直接オフィスに出向いて申請する場合は、近所の Community Service Office を探して行ってみてください。

この保険に加入できると判断された場合には、クーポンと呼ばれる証明書が毎月自宅に送られてきます。クーポンは保険証としてクリニックや病院で通用します。クーポンがあると、医療費のほぼ全額を、州と連邦政府が支払ってくれます。いったん Medicaid の保険にはいると、その中でいくつか保険会社の選択肢があります。キング郡では Molina、Group Health、Community Health Plan、Columbia United から選べます。クリニックの中には「クーポンを一切受け付けない」というところや、「Molina は使えるけれど Community Health Plan は使えない」というところもあるので、予約の際に自分のクーポンが使えるかどうか確認しておきましょう。

(2012年1月)

モバイルバージョンを終了