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妊娠が難しい時 第1回 不妊症専門医にかかるタイミング

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ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士
押尾 祥子さん

Sachiko Oshio, CNM, PhD, ARNP

Nadeshiko Women’s Clinic

【メール】 info@nadeshikoclinic.com
【公式サイト】 www.nadeshikoclinic.com
詳細プロフィールはこちら

「どうして子供ができないのだろう」と思い始めてから、「おそらく不妊症だろう」と自分で納得して専門家に診てもらうまでには、いろいろな心の葛藤があるものです。「不妊症であることがはっきりと診断されれば専門家のところに治療に行くつもりだけれど、その診断はいったい誰がしてくれるのだろう」と、悩む人もいます。いろいろと不安材料を抱えて普通の産婦人科に相談してみたら、「まだ妊娠を試みてから2年たってないから、待ってみたら」と言われただけだった、というような経験をした人も多いと思います。「すぐできるだろう」と思いこんでいたために、子供が欲しいと思ってからたった2ヶ月子供ができないだけで、どんどん気ばかりあせってしまう人もいます。

いつ専門医のところに行くべきか、というのはなかなか難しい問題で、いろいろな事情で答えが異なります。ここでは、いくつか例をあげて大体の目安を示してみましょう。
(下記の症例は、よくあるタイプをまとめたもので、特定の個人の話ではありません。)

例1: A さんは34歳。1年ほど前に結婚しました。生理周期は28日から30日前後で欠かすことなく来ており、排卵日の前には卵白状のおりものが毎回認められます。基礎体温を測ってみたら教科書どおりの2層性になり、排卵日も自分で見当がつきます。ご主人との性交渉も1週間に1~2回あり、性交時の痛みもありません。すぐに子供ができるだろうと思っていたのに、なかなかできないので、心配になって受診しました。問診でいろいろ聞いてみたら、10代のころに一度、クラミジアにかかってひどい腹痛を起こし、抗生物質の注射を受けたことがあることがわかりました。

解説:A さんは年齢的には20代と比べれば卵子の質は下がっているでしょうが、まだ35歳前なので、それほど悪くないと思われます。生理もきちんと来ており、体温表が2層性であることから判断して、排卵は毎月きちんとあるのでしょう。子宮頸管粘液も充分あるので、精子はそれに助けられて、子宮内に問題なく入っていけるでしょう。性交渉の数も妊娠のチャンスを作るのには充分と考えられます。これほど良い条件が整っているのに1年たっても妊娠しないというのには、何か他に問題があることが考えられます。1つの可能性は、若いころの感染症で卵管が詰まってしまっているのかもしれないということです。構造上の理由があるのかどうか、卵管通気検査をしてみる必要がありそうです。あるいは、ご主人の精子の数や質に問題があるのかもしれません。もう1年自然に待っても良いのですが、35歳を過ぎると次第に条件が悪くなってくるので、そろそろ検査をしてみる時期に来ていると思います。

例1: B さんは38歳。ここ1~2年、生理が定期的に来ないようになってきました。周りの友達が40歳や42歳で妊娠・出産していたので、自分もまだ大丈夫だろう、と思っていました。仕事が忙しく、1ヶ月生理が無かったときにはストレスだろう、と軽く考えていましたが、特に普段と変わりない生活をしているのに3ヶ月にわたり生理が来ず、少し期待しながらやってみた妊娠検査が陰性だったときには、かなり落ち込みました。ご主人は子供が欲しいと前から言っていたので、これを機会に2人できちんと検査することにしました。

解説: 35歳を過ぎると正常に妊娠できる確率は下がってきてしまいます。特に38歳から40歳ぐらいというのは、治療できるぎりぎりのところまで来てしまっていると考えて良いでしょう。もちろん、38歳でも45歳でも自然に妊娠して出産する人はいます。でも、その確率が低くなってきているのです。また、同じ38歳でも、生理があまり来ない人は生理がきちんと来る人に比べれば、さらに条件が悪くなっています。クロミド・チャレンジ・テストというホルモン検査をして、卵巣が排卵できる状態なのかどうかを確認する必要があります。もし妊娠を望むなら、今すぐに専門医のところに行って、検査・治療を始めるのが良いでしょう。

例3: C さんは25歳。若いころからずっとピルを飲んでいたので、生理は28日ごとに来ていました。去年結婚したのでピルを止めてみたら、まったく生理が来ません。生理不順という理由で婦人科に受診してみたら、多のう胞性卵巣症候群と言われました。子供は欲しいけれど、不妊症の専門家のところに行くのには抵抗があるため、その婦人科でクロミドという排卵促進剤をもらって試してみることにしました。少しずつ量を増やしながら何ヶ月も試してみたところ、なんとか排卵はするようになったのですが、妊娠には至りません。治療を受けながらもう1年がたち、生理が来るたびにずいぶん落ち込みます。ご主人が心配して、子供のことは忘れてしばらくリラックスしよう、と言ってくれるのですが、毎日子供のことばかり考えてしまいます。

解説:C さんの場合はまだ若いので、良い卵子が卵巣にたくさんあるのですが、ホルモン・バランスの問題で排卵できなくなっています。クロミドは簡単に使える薬なので一般によく使われるのですが、3サイクル試してみてもだめならば、もう少し専門的な治療に進むのが普通です。クロミドに加えて、1日おきの超音波検査で排卵の日を確定し、注射を1回だけして排卵を促します。そして自然の性交か人工授精でタイミングをしっかり合わせます。これだけのことでも、ただクロミドを飲んでいるのと比べ、成功率が大分高くなります。普通の婦人科ではクロミドの処方ぐらいまでしかできない場合が多いので、専門家の治療に切り替える時期かもしれません。

(2007年5月)

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