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NPO 団体 『Three Dollar Bill Cinema』 倉本衣織さん

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右手前が倉本さん

 

倉本衣織(くらもと・いおり)さん
【学校】 University of Washington
【留学開始】 2015年4月
【留学前】 中央大学文学部人文社会学科社会学専攻/ビジネス・ブレイクスルー大学経営学部グローバル経営学科
【インターンシップの内容】 Three Dollar Bill Cinema にてスポンサーの開拓や維持のお手伝い
【自己紹介】 茨城県の農家に生まれ、つくば市にある私立茗渓学園にて6年間、学寮で暮らす。その後、中央大学で社会学、またビジネス・ブレイクスルー大学でマネジメントを学び、東京都南千住で gekidanU を率いて演劇活動中。2015年は活動を休止し、UW でビジネスを学ぶ。
【連絡先】 kuramoto85@gmail.com
【gekidanU とは】 南千住を拠点に活動する劇団。2012年2月、遠藤遊を主宰に結成。劇場公演の他、南千住の街中の野外劇場での野外公演を定期的に行っている。時代の波にのまれ、人々の心から消えつつある東京の下町南千住からの文化発信を目的に、野外演劇という枠にはまらない活動を目指す。

留学しようと思ったきっかけは?

留学を決断した2014年は個人的な「新しいことに挑戦しようキャンペーン」中でした。それで挑戦を決心したのが、(1)完全オンラインのビジネス・ブレイクスルー大学で経営学を学ぶ、(2)gekidanU を野外演劇集団にする、(3)留学する、の3つでした。

留学にはかなり前から興味がありましたが、母国語以外の言語を使って生活することにものすごい恐怖心がありました。そんな時に父が新聞の広告欄で見つけてくれた IBP プログラムの奨学金試験について調べ、1年間の留学のうち最後の3ヶ月は企業でのインターンシップを経験できることがわかりました。当時の自分が持っていたすべての興味に当てはまると感じ、受験したところ、幸運なことに合格し、シアトルに来ることができました。このプログラムを見つけてくれた父には本当に感謝しています。

実際に来てみてシアトルはどんな街?

ここに住む人は本当にオープンマインド。優しく声をかけてくれる方がたくさんいます。マリファナが合法だったり、アメリカでも最大級の LGBTQ コミュニティを持っていたり。「シアトルはとってもリベラルなんだ」と語る現地の方々は誇らしげです。そしてやればやっただけ、自分に返ってくるシステムができています。たとえば Meet up のイベントに勇気を出して参加してみたら、そこであった人と個人的なつながりができて、その人がまた別の人を紹介してくれました。今度は自分がその人を友達に紹介したら、その友達も新しい友達(だけでなくプロジェクトなども)紹介してくれるなど、そういった流れがとてもスムーズです。

留学してからのユニークな体験

映画『人の望みの喜びよ』上映会

普段の生活では本当にたくさん遊びましたが、興味のあるボランティアはできるだけチェックして積極的に参加しました。春の桜祭では60名以上の方に浴衣の着付けをし、秋の Lesbian & Gay Film Festival ではイベントに訪れる各監督にライトをあてる仕事をまかされました。また、映画 『人の望みの喜びよ』のシアトルでの上映会のお手伝いもしました。振り返るとすべての活動が自分の劇団でやってみたいことにつながり、信頼できる環境で挑戦する機会を得られたと思っています。

どんなインターンシップ?

ミーティングの様子

Three Dollar Bill Cinema は Lesbian & Gay Film Festival という映画祭を企画している団体です。10日間で50本以上の LGBTQ 映画を上映します。ボランティアとして参加してみて、芯があって穏やかな企画メンバーがエネルギッシュな多くのファンを率いて、20年もこのイベントを進化させ続けていることに感銘を受けました。ボランティアのメンバーには高校生もたくさんいて、誰にとっても居心地のいい環境がとても魅力的。こんなイベントを企画しているのは一体どんな人たちなんだと、好奇心いっぱいで飛び込みました。

私の主な仕事はデモグラフィック・データの集計・分析、過去上映作品の整理、イベントのアシスタントです。また、自分からやりたいことを提案すればほとんどの場合、チャンスを与えてくれます。1月に行われた大人向けの映画撮影ワークショップでアシスタントをする際、参加者満足度アンケートを実施してはどうだろうと提案したところ、作成から集計まですべてを任されました。結果、参加者の中から「次回はボランティアや講師として参加したい」という声を集めることができ、新たな企画案につながりました。

映画撮影ワークショップの様子

このインターンシップでしか得られないことって?今後役立てたいことは?

アメリカではサンフランシスコに次ぐ規模とされるシアトルの LGBTQ コミュニティに興味があるなら、本当におススメのインターンシップ先です。ただ、私が本当に気づけてよかったと思うことは、NPO 団体の必要性です。このインターンシップを始めるときに NPO 団体が成長していくメカニズムを理解したいと考えていました。非営利なのに、どうしてボランティアではないのか。私の結論は、「人は自分に本当に必要なもの、価値のあるものには自然と対価を払う」ということです。

前述のワークショップの参加費は無料でしたが、寄付をしたい人は上限なく受け付けるというスタイルでした。オンラインの寄付ができるように用意していたものの、事前に寄付をする人はほとんどいませんでした。しかし、ワークショップが終わった後、何人かの人が声をかけてくれ、さまざな金額の現金を寄付してくれました。ある人が私に言ってくれたことは、「安心してクィア映画を撮影できる環境があることがとてもうれしかった」ということです。

人それぞれ価値を感じるところは異なっても、それに対価を支払いたいという普遍的な考えがあることを学びました。

同僚のみなさんと

これから1年留学する人へのアドバイス・今後の目標

1年は本当にあっという間に終わってしまいます!過ごし方は人それぞれだと思いますが、どんな生活スタイルが自分に合っているか、常にアンテナをたてて模索し続けるといいと思います。私の場合、「今月達成すること」というように、1カ月ごとに可視化するようにしていました。また、To Do リストだけだと疲れてしまうので、やりたいことを書きまくる Bucket リストも付けるようにしていました。それでも最後の1カ月はやりたいことが倍増すると思います(笑)。

日本に帰ったら、また劇団の活動を再開します。同じ時期にロンドンに留学しているある脚本家と、「英語が話せるようになるのは当たり前だから、面白くなって帰ってこよう」と約束しています。彼とまた会ってこれからの話をするのが本当に楽しみです。シアトル公演やここで会った友人の出身地を巡るツアーなどを企画するのも、今後の目標です。

掲載:2016年4月

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