6月17日のニュースですでにご存知の方も多いと思いますが、6月19日が Juneteenth(ジュンティーンス)として11番目の連邦政府の祝日(※)に指定されました。アフリカから連れてこられて奴隷にされた人たちの解放に由来する祝日ですが、本来の祝日の2日前に法律が成立し、翌々日が祝日に指定されたことに驚いた方も多かったのではないでしょうか。今回はこの新しい祝日の制定にちなんで、アメリカの祝日事情について解説したいと思います。
※現時点でサウスダコタ州は祝日と認めていません。
連邦祝日の意味
まず上記にある連邦祝日(Federal Holiday)について、簡単にご説明します。これは米国連邦政府が有給祝日(paid holiday)として認定している日です。
指定日は、必須業務ではない連邦政府機関がすべて休業となり、すべての連邦政府職員に対し、有給祝日扱いとなります。
つまり、この「連邦政府が指定する有給祝日リスト」に新たに6月19日 Juneteenth が追加されたというのが、今回の出来事なのです。
就業規則と連邦祝日
ここまで読んでくださった方の中には、「就業規則に6月19日を祝日として追加しなくてはならないのか?」「連邦祝日は必ず有給祝日としなくてはならないのか?」と疑問に思った方もいるかもしれませんが、答えは「NO」です。
先日、気の早い従業員から「来年以降は6月19日が有給祝日となるか、振替(2022年6月19日は日曜日)になるか、問い合わせを受けた」という記事を目にしましたが、多くの企業はこれから決定することになるでしょう。
弊社もこの件について時々質問を受けますが、米国には日本の「国民の祝日」のように国が定める祝日は存在しません。民間企業の場合、どの祝日を休業とするかは各企業が決定し、その祝日を有給祝日(paid holiday)とするか否かも企業の判断に委ねられています。
ただ、未曽有の採用難と言われる今、他社と比較して有給祝日が少ないことは人材採用の足かせにはなっても、アドバンテージにならないことはご理解ください。
同様に、従業員が祝日に勤務した場合に割増賃金を支払う義務はありませんが、祝日勤務に対するベネフィットや業界による慣習もあり、祝日出勤に対する割増賃金を採用している企業も少なくありません。
そこで今回は、大手マーケティング会社 Mercer 社と米国労働統計局(BLS: Bureau of Labor Statistics)から発表されている2種類のデータにもとづいて有給祝日の実施状況を示した下記グラフを、就業規則に記載した内容と比較してみてください。
なお、Mercer 社は2021年、BLS は2018年が最新のデータとなっていますが、有給祝日は他の福利厚生のようなトレンドがあまり存在しないため、BLS データも参考にできると考えて良いでしょう。また、Mercer 社は大企業を中止としたデータを収集する傾向があり、幅広い企業を対象としたBLS よりも付与日数が多い傾向にあることも申し添えておきます。
おおむね予想通りだったでしょうか。ちなみに、独立記念日、感謝祭、クリスマスといった主要祝日を除いた祝日を採用するかどうかは地域や業界によって差があるため、パーセンテージの低い祝日であっても、ローカルや業界事情を考慮する必要があります。また、企業によってはフローティング・ホリデー(floating holiday: 変動祝日)という任意の日を有給祝日として選んで取得できる制度や、企業が毎年カレンダーに合わせて指定する制度も存在します。
なお、前述の新しい祝日Juneteenth に関する調査結果がすでに上記のMercer 社のデータに反映されていますが、これによると実施予定は9%と低くなっています。この種のデータは今後数多く発表されるため、変動も考えられますが、現状では多くの民間企業が祝日に指定するとは考えづらい状況です。
最後に、Good Friday(キリスト教関連の祝日)と New Year’s Eve(大晦日)が連邦祝日リストに入っていないことにお気づきでしょうか。特に日系企業は大晦日を休日とする企業が多いですが、これは特定の企業で実施率が高い有給祝日の典型と言えるでしょう。
反対に、連邦祝日に指定されていても、コロンブス・デーのように、民間企業のほとんどが休みにしていない祝日も存在します(BLS は対象データなし)。
総合人事商社クレオコンサルティング
経営・人事コンサルタント 永岡卓さん
2004年、オハイオ州シンシナティで創業。北米での人事に関わる情報をお伝えします。企業の人事コンサルティング、人材派遣、人材教育、通訳・翻訳、北米進出企業のサポートに関しては、直接ご相談ください。
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