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「受験生と大学をアプリでつなぐ」EdXeno 共同創業者ジェイソン・ブッカーさん

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「アメリカの大学受験で考慮されるのは、高校の成績だけではない」ということを、よく耳にすると思います。実際、アメリカの大学受験は、高校の成績に加え、ボランティアなどの課外活動、小論文など、さまざまな要素で構成されています。どの高校にもこの複雑な受験プロセスをサポートしてくれるカレッジ・カウンセラーがいますが、米国で一人のカレッジ・カウンセラーが担当する学生数は平均約400名で、個別相談できる時間は非常に限られています(米国スクールカウンセラー協会:Student-to-School-Counselor Ratio 2022-2023)。今回は、この問題に着目し、テクノロジーの力で大学受験プロセスの簡素化を目指す、シアトルのスタートアップ『EdXeno』の共同創業者で元カレッジ・カウンセラーのジェイソン・ブッカーさんにお話を聞きました。

もくじ

EdXenoとは?

EdXenoは、2023年にシアトルで創業したEdTechのスタートアップで、大学入試を考えている高校生と大学をつなぐプラットフォームを提供しています。

高校生は、アプリを通じて自分に合った大学を探し、無料でプロのカウンセラーからアドバイスを受けながら、大学出願計画を立てることができます。

大学は、EdXenoを通じて、高校生からの質問に直接回答することができます。将来的には、プラットフォームを使って、大学のリクルーターとのビデオ面談やバーチャルツアーなどにも参加できるようになる予定です。

このように、両者にとって入試のプロセスを簡素化することが目的です。今年の2月末にリリースしたばかりで、学生は無料でアプリを利用できるようになっています(App Store, Google Play)。

Edxeno アプリの画面

起業したきっかけは?

私は起業するまで10年以上、高校でカレッジ・カウンセラーとして働いていました。あらゆる能力や所得層の生徒を担当しましたが、共通して言えることは、「高校生は、高校卒業後の人生設計に関する情報を本当に必要としている」ということです。

カレッジ・カウンセラーとして、進路に関する情報を持っていたものの、生徒や保護者に正しい情報を届けるためのインフラが不足していました。特に、公立校だと一人のカウンセラーが数百人を担当することもあり、生徒一人にかけられる時間は非常に限られます。

現代の高校生は皆、スマートフォンを持っています。この問題を解決するための答えはテクノロジーであり、生徒のニーズに応えることだと気づき、試しにソーシャルメディアやインターネット上の学生が集まる場所で、オンライン・カウンセリングを始めてみました。すると、私が勤務していた高校の生徒からもオンライン・ミーティングの予約が殺到したのです。

この経験から、大学受験に関する情報をモバイルアプリを通じて提供することが、現状のプロセスに大変革をもたらすと確信したのです。

ジェイソン・ブッカーさん

起業して変えたいと思ったことは?

EdXenoを通じて、大学出願プロセスを公平なものにしたいと思っています。大学受験に関するさまざまな情報は既に存在しています。しかし、まだ未熟なティーンエイジャーにとって、多種多様な情報をナビゲートするのは非常に難しいものです。また、保護者がアメリカの特殊な大学入試プロセスを経験していないと、不利になりかねません。

小規模大学は、大規模な公立大学に比べ、学生を募集する際に不利になる可能性があります。EdXenoのプラットフォームを通じて、小規模な大学でも、国内外を問わず、大学にフィットした学生と接点を持つことができるようになります。

今までで最大のチャレンジは?

最大のチャレンジは、これが初めての起業であることと、私が技術者ではないということです。私のバックグラウンドは教育で、ビジネスの経験もありません。ですので、起業家として成功する方法を学ぶため、私をサポートしてくれる適切な仲間を見つけることが重要でした。

他にも様々なチャレンジがありましたが、一番の気づきは「自分ひとりではこの事業の成功はない」ということがわかったことです。起業してから最初の9カ月は社員は私のみでしたが、今ではEdXenoのミッションに共感した7名のチームで運営しています

会社で一番誇りに思っていることは?

自分のアイデアを信じて、大きなリスク取って起業したことを非常に誇りに思っています。起業資金を捻出するため、シカゴにあった自宅を売却しました。「自分の心に従え」というアドバイスをよく耳にしますが、私の場合は「自分の頭に従う」のがベストだと学びました。EdXenoは私が生み出したベストアイデアなので、実行すべきだと気づき、それを行動に移したことを誇りに思っています。

私の父親は1940年代にバージニア州の低所得層の家庭で生まれ育ち、大学に進学できませんでしたが、空軍を経て、IBMに入社し、その後、テクノロジー分野で起業しました。父は EdXenoの運営には関わっていませんが、「(起業は)難しいけれど、できる」ということを証明してくれました。

連邦最高裁判所による大学入試におけるアファーマティブ・アクションに関する判決の影響は?

連邦最高裁判所は、2023年6月大学入試におけるアファーマティブ・アクションを違憲とする判決を下しました。

この判決が実際にどの程度、現状の入試プロセスに影響を与えるのかはわかりませんが、アメリカにおける大学入試の情勢を象徴するものだと思います。

学生にとって、この判決は一部の大学への受験を思い留まらせたり、「自分が必要とされている」「自分の居場所がある」という信念を弱らせる可能性があります。

大学側に影響があるとすれば、求める学生を獲得することがより難しくなるかもしれません。大学は多様性を求め、さまざまな背景を持つ学生を入学させたいと思っていますが、判決はこのような取り組みを妨げることになります。

EdXenoでは、大学と学生がデジタル・プラットフォームを通じてお互いに直接連絡と取り合うことを可能にします。それは、現在の状況において、両者の助けになるはずです。

アファーマティブ・アクション:教育や雇用の機会の不平等を是正するため、就職や入試の際、人種的少数派を優遇する措置。

アメリカ大学入試を控える高校生の子どもを持つ親に対して、アドバイスはありますか?

とにかく早く準備を始めることが重要です。願書提出の時期だけでなく、高校生活を通じて情報を入手するようにしましょう。高校や地域の保護者とネットワークを築くことも大切ですさまざまな状況の家庭があると思いますが、あなたと同じような立場で既に入試プロセスを経験した保護者は素晴らしい情報源になるでしょう。

大学についての情報を得るには、キャンパスを訪問して、アドミッションズ・オフィスに質問するのが一番です。合格が確定する前に、アドミッションズ・オフィスと接触するのは、リスクがあると思うかもしれませんが、そんなことはありません。彼らは、高校生とその家族に大学についての情報を提供し、助けるために存在しているのですから。

また、子どもに合った大学を見つけるために、ランキングだけで判断してほしくないと思います。大規模大学では1クラスの生徒数が100~500人ということもよくあります。一方、小規模大学では1クラス20名以下の少人数ですから、そのような環境でこそより良いパフォーマンスを発揮できる学生もいると思います。また、自宅から近い大学や、あなたが知らないような小さな大学にも、素晴らしいところがあるかもしれません。

アメリカ大学受験を控える高校生に対して、アドバイスはありますか?

他の国では、教育や大学入試は実力主義で、優秀な学生は優秀な大学に入り、最高の機会を得ることができるのだと思いますが、アメリカはそうではありません。

アメリカの入学審査はより質的で、成績やテストの点数以外の要素にも基づいています。例えば、入学審査の一部の小論文では、あなたの人格を理解するために、感情に問いかけるような質問をすることがあります。日本やその他のアジア圏の学生はこのような質問に慣れていないため、コーチングを受けることが非常に役立つと思います。

中には、英語力に不安のある人、渡米して日が浅い人もいるかもしれません。日本から来て、アメリカの学校に馴染むのに苦労した方もいるでしょう。感情的なプロセスになってしまうかもしれませんが、逆境を乗り越えた経験は大学受験においてとても価値のある経験です。小論文のトピックの選び方、書き方なども、EdXenoのカウンセラーに相談して欲しいと思います。

シアトルのスタートアップコミュニティの特徴は?

他の都市に比べて、ナビゲートしやすいと思います。イベントにたくさん参加することによって、よい友人にも恵まれましたし、チームメイトの二人もシアトルに来てから出会いました。Seattle Startup Friendsというスタートアップに興味のある人向けのネットワーキングイベントもありますし、ワシントン大学にあるCoMotion Labsもリソースとして素晴らしく、このインタビューを受ける機会も与えてくれました。

初めてスノーシューに挑戦

ジェイソンさんは休日をどんなふうに過ごしていますか?

スポーツ観戦が大好きで、野球やホッケー観戦によく行きます。サンノゼ出身なので、ベイエリアのチームのファンなのですが、今はシアトルに住んでいるので、マリナーズとクラーケンのシーズンチケットを購入して、それぞれ年間10~20試合ほど観戦しています。スキーやハイキングなどのアウトドアも好きで、先週末は初めてスノーシューにトライしました。コンサートや音楽イベントにもよく行きます。

ありがとうございました。

EdXeno
共同創業者:ジェイソン・ブッカー、ルーク・ラムバート
社員数:7名(フルタイム4名)※2024年3月時点
本社:シアトル
創業年:2023年
公式サイト:www.edxeno.com

聞き手:大阿久裕子 写真提供:EdXeno

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