ワシントン州と姉妹提携を結ぶ兵庫県では、日本国内のスタートアップをさまざまな方法で支援しているほか、海外スタートアップの兵庫県への進出も支援しています。そこで、兵庫県の取り組みについて、兵庫県ワシントン州事務所の池上卓久所長に寄稿していただきました。
自治体でも広がるスタートアップ支援
新しい技術やビジネスモデルを有し、急成長を目指すスタートアップは、経済成長や雇用創出等に大きな役割を果たすとともに、新たな社会課題を解決する主体として世界的に注目が集まっています。
日本でも政府が2022年を「スタートアップ創出元年」と位置づける等、関心が高まっており、自治体においても、2010年代前半から先進的な取り組みとしてスタートアップ支援が始まりました。その動きが全国的に広がる中、兵庫県でも神戸市をはじめとした関係機関と連携しながら各種事業を実施しています。
兵庫県の主な支援
若者企業人材育成
社会課題の解決に向け、起業も含め主体的に挑戦する若者を育成するため、県内の中学・高校等における「ひょうご起業ゼミ」や県内大学と連携した起業人材育成講座を実施するほか、学生等の新ビジネスアイディアを発掘する「スタートアップチャレンジ甲子園」を兵庫県と大阪府の共同で開催。
起業プラザひょうご
起業に興味がある人、起業した人たちをサポートするために、三井住友銀行神戸本部ビル内にインキュベーション施設「起業プラザひょうご」を設置し、起業に向けたオフィススペースを提供するだけでなく、専門家によるアドバイス・セミナーや起業仲間とつながるコミュニティの形成により、スタートアップを支援。
ひょうご神戸スタートアップファンド
「投資環境の整った起業家の集まる兵庫県」を目指し、兵庫県・神戸市が県内企業・金融機関等と連携して、「ひょうご神戸スタートアップファンド」（規模：約11億円）を設立して、成長が期待されるスタートアップを資金面でサポート。
ひょうごTECHイノベーションプロジェクト
県内市町・機関等から提出された社会・地域課題と、先進的な解決策を有するスタートアップ等をマッチングし、協働して実証実験を行うことで課題の解決を図るとともに、実証実験を通じて民間事業者等の新しいサービスの開発、事業成長を促進。
ひょうごオープンイノベーション推進事業
県内でのイノベーション創出に向けて、兵庫県内企業と県内外スタートアップ企業等のオープンイノベーションを推進。オープンイノベーションに関するイベントを定期開催するほか、共創に向けたマッチング支援や協業検討にかかる費用の一部を支援。
海外展開に向けたサポート
このようなスタートアップ支援を行なう中で、海外展開に向けた取組として、兵庫県・神戸市が連携し、SDGs Challengeを実施しています。
これは、脱炭素社会をはじめとするグローバルなSDGs課題の解決を目指すスタートアップをサポートするプログラムで、海外展開に向けたビジネスプランメンタリング、海外市場の動向等に係るレクチャー等のほか、スタートアップの海外実証等を支援しています。
また、気候変動等の社会課題解決に資する最新の技術を兵庫県内へ実装することを目指し、脱炭素・気候変動対策に取り組む海外スタートアップと県内スタートアップ等のビジネスマッチング・実証実験をサポートしています。
兵庫県への企業誘致
兵庫県では、スタートアップも含めた企業誘致に積極的に取り組んでおり、各種補助・税軽減といった優遇制度のほか、ひょうご・神戸投資サポートセンターが、様々な関係機関と連携し、進出の際に必要な現地情報やニーズに合わせたきめ細やかな支援を行なうワンストップサービス等を実施しています。
スタートアップの進出事例としては、シアトル発の『ネイティブ・イングリッシュ・インスティチュート』が日本法人を神戸市内に設立し、英会話オンライン学習サービスを展開しています。
まとめ
このように、兵庫県ではさまざまなスタートアップ支援に取り組んでいますが、さらなる活性化に向けては、海外スタートアップとの協業、県内スタートアップの海外進出、海外スタートアップと兵庫県内企業の協業、海外スタートアップの兵庫県進出といった海外との連携を視野に入れる必要があります。
当事務所はスタートアップの本場とも称される米国に所在していますので、県内スタートアップの発展に向けて、引き続き米国との連携支援に取り組んでいきたいと思います。
池上卓久（いけがみ・たかひさ）
兵庫県ワシントン州事務所所長
神戸市東灘区出身。関西学院大学（西宮市）卒業。2023年４月にワシントン州シアトル市に赴任し、ワシントン州をはじめとする米州地域との経済・文化・人的交流の促進などを担当しています。