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「大切なものをなくさない!」紛失防止デバイスを開発 PebbleBee 社 CEO ダニエル・ダオウラさん

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CTO ニック・ピアソン=フランクスさん(左)、CEO ダニエル・ダオウラさん(右)
ボーイング勤務時代から一緒に物づくりをしていたそう

家族でやって来た遊園地。その人混みの中で我が子を見失ってヒヤッとする・・・。

そんな体験がきっかけとなって、財布や車の鍵をスマホとつないでそのありかを知らせるデバイスを開発した、PebbleBee 社 CEO のダニエル・ダオウラさん。ボーイング社でエンジニアとして働いていた時に帰宅後の趣味として始めたプロジェクトは、今では Costco やアマゾンでも販売される人気商品のスタートアップになりました。

もくじ

PebbleBee の仕組み

PebbleBee のキーチェーンを購入し、スマホに専用アプリをダウンロードしてシンクしたら、車の鍵にそのキーチェーンをつけるだけ。例えば『車の鍵を探す』ボタンを押すと、キーチェーンが大きな音を出し、鍵のありかを教えてくれます。逆に、キーチェーンを押してスマホを鳴らすこともできるので、スマホが見つからないなんてことももうありません。スマホと通信できる距離は業界一長く、充電も可能。小さくてビジネスライクなデザインも素敵です。

2015年の創業から約100万個を売り上げ、これからも新商品が続々準備されています。

ダニエルさんに、11年以上に及ぶボーイング社でのキャリアに終止符を打ち、起業するまでの思いときっかけ、そして今後の目標について伺いました。

ダニエル・ダオウラさんインタビュー

PebbleBee のキーチェーン

– 起業して変えたいと思ったことは?

テクノロジーの力を使って、世界中の人が一番大切なことに集中して暮らせるようにしたい、というのが我々の思いです。

PebbleBee の開発を始めたきっかけは、遊園地で当時3歳だった娘が迷子になった体験です。結局2分ほどで見つかったんですが、もう一生会えなかったらどうしよう、といった、最悪のシナリオが頭の中を駆け巡りました。

人生にとって大切なのは、何かを経験すること、”experience” だと私は考えます。親になることがまさしくそうですよね。何事もやってみないとわからないし、やってみて学ぶ、というその体験が人生の要なのだと思うのです。だから、誰もが何かの心配をすることなく、人生の素晴らしい “experience” を満喫するお手伝いをしたいのです。

– 起業したきっかけは?

起業することと、起業しないでボーイング社で働き続けることを比べて、起業しない方がリスクが大きい、と思うようになった時、それが起業するタイミングでした。

事業を一から興すのは、自分でやってみないとわからないことばかりです。でもそれは、他では絶対に学べないことが学べるということでもあります。実際、起業してから本当に多くのことを学びました。

起業には山もあれば谷もある。ものすごく “grit” や忍耐強さが求められる。正直、もうやめてしまおうかと思ったことは何度もあります(笑)。でも自分の商品とビジョンを信じて、毎回踏ん張ってきました。

– 起業して良かったと思う時は?

お客さんからポジティブなレビューをいただく時が一番幸せです。「とても大切なものが入っていた財布を間違えて捨てられてしまったけど、PebbleBee 製品のおかげで取り戻すことができた。まるで神の贈り物だ!」という感動のエピソードが書かれた手紙をもらったことがあります。とても嬉しかったですね。

あともう一つ、人を雇うということで、その人たちやその家族の人生に大きな影響を与えることができているということも、とても嬉しいことです。ありがたいことに、社員はみんなこの会社で働くのが大好きなのです。そんな会社を作ることができたのは、本当に嬉しいです。

– 今までで最大のチャレンジは?

人のマネジメントですね。小さな会社ですから、社員一人ひとりの日常のドラマが自然に会社にも持ち込まれます。そんなチームをまとめていくのは、とても難しい仕事です。

新しい人を雇うことも、そう簡単にはできません。その人が過去にどんな経験をしてきたかも大切ですが、もっと単純に、チームとの息が合うかあわないかがとても重要です。それを見極めるのは、サイエンスというよりアートの粋ですね。

– 会社で一番自慢のポイントは?

これもまた、人です。スタートアップの生活は浮き沈みが本当に激しいですが、それについてきてくれる社員、そしてその家族の熱意とサポートがあってこそ、今この会社があるんです。素晴らしいチームに対しては、本当に感謝しかありません。

また、ソラコム のような素晴らしいパートナーにも恵まれました。ファンディングだけでなく、事業のアドバイザーとして日々意見交換することが、とても良いダイナミクスを生み出しています。

そして、いつも100%応援してくれる妻と3人の子どもたちにも感謝しています。子どもたちはよく商品やロゴの絵を書いてくれます。親としてこれほど誇りに思うことはありません。

PebbleBee のカード

– シアトルのスタートアップ・コミュニティの特徴は?

シアトルはハードウェア系のスタートアップにとってはとても難しい環境です。ハードウェア関連の企業や投資家はシリコン・バレーやコロラド州に集積していますから。ソフトウェアに関しても、シアトルの人材確保は競争がものすごく激しいですね。マイクロソフトも、アマゾンも、グーグルもいる。ハードもソフトも必要なスタートアップには、正直、シアトルはおすすめできません。

じゃあなんでここにいるかって?(笑)アウトドアが大好きなんですよ。山も海も両方揃っていますしね。私が生まれ育ったレバノンにも雪山はたくさんありますが、シアトルの方が暮らしやすいです。

– よく行くコーヒーショップは?

Woods Coffee が好きです。創業者のウェス・ハーマンに会ったことがあります。彼は自分の子供にビジネスのいろはを教えるために、「コーヒーショップを作る」という課題を出したそうですが、そのアイデアをビジネスにしたらうまく軌道に乗って、どんどん店舗が増えています。

「事業を興すということは自分でやってみるまでわからない、でもそれは人生に欠かせないとても大きな学びになる」という彼の哲学に、私の生き方と考え方が重なるところがあります。

– 一緒に働きたい日本の会社・実業家・投資家は?

日本に関しては、ペット市場とシニア世代向けの2つのマーケットで、将来的にパートナーシップを組めるところを探しています。ペットの首輪につけて迷子を防止する使い方がひとつ。あとは、音声認識機能がついていて操作が簡単なので、シニア世代向けに安全のための位置確認などにも使えるのではないかと思っています。

ソラコムとのパートナーシップは最近発表したばかりですが、今、1千万ドルを目標にファンドレイジングをしているところです。応援をよろしくお願いします。

PebbleBee
CEO:ダニエル・ダオウラ
社員数:約10名(2019年5月現在)
本社:ベルビュー
創業年:2015年
公式サイト:pebblebee.com

取材・文:渡辺佑子 写真:PebbleBee

このコラムの内容は執筆者の個人的な意見・見解に基づいたものであり、junglecity.com の公式見解を表明しているものではありません。

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