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留学生が聞く!社会人インタビュー第1回:「キャリアビジョンの定め方」 Microsoft 鷹松弘章さん

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「大学卒業後は、日本で就職する」。そういう未来を描いてアメリカで勉強している日本人留学生は少なくありません。でも、就職活動って、いったい何から始めたらいいの?自分にあった企業の探し方って?日本で就職するって?

そんな悩みと向き合いながら今まさに就職活動に取り組んでいる日本人留学生が運営する SIJP 学生部によるレポートです!

【この記事の主なトピック】
これから就職活動をする学生に自分なりに聞き取り調査をしたところ、「将来のキャリアビジョンを定めることが難しい」という悩みが多く寄せられました。そこで、カナダの大学に留学し、日本に帰国して外資系企業に就職、Microsoft の米国本社に異動してキャリアを重ね、現在は毎年250人ほどの社員採用面接を行っている採用のプロ・鷹松弘章さんに、キャリアビジョンを定めるためのポイントについてお話を伺いました!

  • 面接に向けて、強力な自己PRを作ろう
  • 業界選びは、自分の好きなこと・得意なことを考えることから始めよう
  • 大企業と中小企業、どっちが自分に向いているか考えよう
  • 小さい頃、どんなことが好きだったか考えてみよう
  • 在学中に必ずインターンシップやボランティアをして経験値を高めよう

お話を伺った鷹松さんってどんな人?

鷹松弘章さん

幼い頃からスキーとパソコンに夢中だったという鷹松さん。高校時代に全国大会にも出場したが、インターハイ前に怪我をしたためスキーの道を諦めざるをえなくなった。しかし、小学生の頃から独学で学んだプログラミングでは、留学中に授業で先生のアシスタントを務めるほどで、ひたすら勉強に打ち込んだ結果、学部トップの成績で卒業。外資系の日本企業を経て、シアトルの東にあるレドモンド市に本社を置く Microsoft へ。まさに「やるならとことんやる!メリハリが大事」というツワモノである。

鷹松弘章さん経歴:
1971年生まれ。日本の高校を卒業後、カナダの大学でビジネスを専攻。3年次に日本で就職活動し、1994年にロータス株式会社の製品開発部門に入社。4年後、マイクロソフト株式会社(現日本マイクロソフト)に転職し、2001年に米国 Microsoft Corporation に異動。現在は同社 Windows & Device Group 部門でエンジニアリングとマネジメンントを担当し、これまでに Windows Media Center、Window Media Player や、Windows Vista 以降 Windows 10 までの開発を手掛けてきた。また、年間250人ほどの社員採用面接を行っており、採用面接のプロとして人事に関する講演会や記事の投稿なども行っている。モットーは「理解せずには前に進まない」。

面接に向けて、強力な自己PRを作ろう

-カナダの大学に留学していた鷹松さんは、就職活動期の面接時にその経験をどのように活かし、面接官にアピールしたのですか?面接中に特に意識していたことはなんですか?

とにかく強力な自己PRを作っていくことを意識していましたね。他の学生と違うことをアピールすることによって面接官に強く印象付けることができますし、それがうまくできれば採用につながります。

実際には、日本にいたらできないような経験をしっかり伝える練習をしました。例えば、初めての海外留学だったので最初はまったく英語ができなかったものの、地元のテレビ番組を見たり、毎日学校の勉強を必死にやったり、ボランティア活動をやっていくうちに、徐々に話せるようになったこと。そして、たくさんの人々と関わっていくうちに、その土地の文化や考え方がなんとなくわかってきて、皆が皆、英語を母国語として話す人ばかりじゃないということにも気づいたことで、文法が無茶苦茶だろうと、しどろもどろになってでも伝えようとする気持ちが大事なことなんだと気づいたこと。気負わずに、堂々と胸を張って話すようにしたら、自分の英語が以前より格段に上手くなっていったこと。「こういった経験から人生はとにかくやってみることが大事なんだということに気づきました」と、最後に今の自分に当時の経験がどう活かされているかを語りました。

それがどんなに小さいことでも、自分が経験したことを少しずつ組み立てていけば、丸暗記のような答えではなくなります。そうすると、面接官はその学生がどんな人物なのか具体的にはっきりとイメージすることができます。他の就職活動生とどこが違うのかを明確かつ具体的に伝えることが、強力な自己アピールにつながるんだと思います。

業界選びは、自分の好きなこと・得意なことを考えることから始めよう

-エントリーをする業種業界はどのように絞りましたか?インターネットがなかった時代にカナダに留学していたことで、日本の学生に比べて情報量が圧倒的に足りなかったと思うのですが、留学しながらどのように日本の就職活動や企業の情報を集め、準備をしましたか?

まず、自分の好きなことや得意なことに関する業界で完全に絞りました。就職活動を始める前は国連の国際弁護士になりたかったのですが、大学3年生の時に「やっぱり小さい頃から大好きだったコンピュータに関する仕事がしたい」と気付いて、そこからプロの道を目指すことに決め、コンサルタント会社かコンピュータ会社しか見ませんでした。帰国できる日にちが限られていて、期間を決めて就職活動をしたので、他の業界を受ける時間的余裕がなかったというのも業界を絞った理由に挙げられます。

実際の就職活動の手順としては、まずカナダに留学中にできる限りの情報を集めることから始めました。留学先に日本人学生が多かったのを利用して先輩にたくさん質問したり、カナダの学校にいた日本の就職アドバイザーに相談したり、日本の企業に資料請求して送ってもらったり。そして、自分が受けたい企業をおおよそ絞った後に、今で言うエントリー・シートを国際郵便で各企業に送って、返事があったところと連絡を取って、なんとか帰国中に面接を終わらせてもらえるように頼んだのです。

そんなふうにして短期決戦のために万全な準備を整えたお陰で、帰国中はスムーズに就職活動を進めて、ロータス株式会社やマイクロソフト株式会社などから内定をもらうことができました。時代は違えども、業界を絞る方法や就職活動の基本的な流れは変わらないと思います。

今、学生の皆さんに僕が言うのは、「就職活動をする前に、自分が少しでも気になる企業があれば、情報を徹底的に集めること。だらだら行動するのではなく、期間を決めてテキパキと自発的に行動すること」。業界選びのコツは、自分の好きなことや得意なことを見つめ直すことですね。そうすれば自ずと自分が楽しめる仕事に巡りあえるでしょう。

-自分に正直に生きる。まさに人生そのものですね。

大企業と中小企業、どっちが自分に向いているか考えよう

-いざ業界を絞ろうとする際、大企業か中小企業か、というところで悩む就職活動生は少なくないと思います。何か決め手となるような特徴や違いなどはありますか?

業界を絞る際、大企業か中小企業か、どちらにしようかと気になるところですね。どちらにも長所と短所がありますが、企業はまず、自分のやりたいことを自由にできる会社、できない会社の2つに分けられます。大企業に向いている学生は教科書がないと勉強できなかった学生、中小企業は教科書や学校の勉強に対して疑問を持っていた学生があっているというように。

新卒の場合、大企業に行くと自由度が狭いので、そのシステムを変えることができず、自分のやりたいようにやろうとすると、「ここではこう決まっているんだから」と一蹴されてしまいます。また、会社が大きいだけに、やりたいことをやらせてもらえる部署に配属されるとは限りません。運良くやりたい部署への配属が決まったとしても、すでにその部署ではビジネスノウハウが構築されていて、それに従うしかないケースも多く出てきます。自分のオリジナリティが発揮できない場合も想定しなければいけません。新卒入社の場合、それでハングリー精神を失って、周りのことを考慮しなくなる傾向にあります。

でも、旧態依然の複雑なプロセスやシステムに疑問を持って、そこを変革していくという面白みもありますね。例えば30年間同じやり方でしていたものを、新しい方法を見つけて、より効率的に結果を出せるようになることは、ゼロからモノを作るよりもずっと難しく、自分自身の成長の糧になる。そういうことを乗り越えると、ビジネスマンは成長すると思います。

一方、中小企業では、もともと会社がまだ小さく、今後成長するための人材は喉から手が出るほど欲しいはずです。即戦力を求めていますから、自分のやりたいことをやりたいようにやらせてくれるチャンスは大企業よりも多いと言えるかもしれません。自分の描いたシナリオを周りの上司が吟味しアドバイスを得られるから成長できます。でも、教えてくれる環境や人が不足していることも考えないといけません。将来、独立を目指している人は、中小に入って会社全体を見渡せる機会を増やすこともいいことだと思います。

結局、どちらにするかは、自分の個性で決めるのが一番です。

小さい頃、どんなことが好きだったか考えてみよう

-就職活動生の中にはまだ将来の目標が定まっていなかったり、自分のやりたいことがこれといって特にないと悩んでいたりという学生(自分含め)も少なくないと思います。そういった学生は今後どのように活動をすれば就職活動を成功させることができますか?

やりたいことを見つける一つの方法として、まずは小さい頃に自分が夢中になっていたことを思い返してほしいですね。結局は自分のやりたいことを仕事にするのが一番ですから。

僕の場合、実際に就職活動をする前は国際弁護士やパイロットに憧れていましたが、いざ就職活動が始まって、将来について真剣に考えた時、やっぱり自分が一番好きな事を仕事にしたいって心から思うようになりました。コンピュータとスキーが人一倍得意で好きだったので、そのどちらかに関する仕事をしようとその時決心したのです。

小さい頃に熱中していたことが特になかったり、とっくに忘れたという場合は、自分が何にときめくかに重点を置いてみてください。企業を選ぶ際、特に説明会などに参加した時、少なからずその企業に対して何かしらの印象を抱くと思います。そこに自分がときめくかどうか。もしときめかないようであれば他に切り替えましょう。そうして取捨選択を繰り返すうち、自分のやりたいことが定まって、理想の仕事が見つかるはずです。ですから、就職活動を始める前に自分のやりたいことが見つからなくてもそれほど気にせず、とにかく情報を集めて、いろいろな話を聞いてみること。その中でときめきを見つけられれば、それが仕事との出会いになります。

在学中に必ずインターンシップやボランティアをして経験値を高めよう

-在学中にしておくべきこと、成功させるために学生のうちにやっておくべきことやアドバイスなどはありますか?

学生の間はインターンシップやボランティア活動を絶対にやっておくこと。その経験が社会に出た時に大きな力になりますし、面接にも響きやすくなります。

学生の間は学校で決められた勉強をするわけですが、社会に出たら自己責任で自分のやりたいことを見つけて、自分の目標を立てて自分で行動し進まなければいけなくなります。その学生と社会人の移行期間が大学時代にあるわけです。学生の間に社会人になるための準備をするという意味で、インターンシップやボランティア活動は、社会に出るとはどういうことかを実際に体験できる絶好の場であることは間違いありません。

留学中にカナダでスキー用品を扱う仕事と、写真の現像、それから身障者のケアハウスでボランティア活動をしましたが、英語力だけでなく、働くとはどういうことなのかというのを直接学ぶ機会になりました。そういった経験を語ることで、面接官はその学生が実際に自分のところで働いている姿を思い浮かべることができますし、実際に社会で働いている大人の中に入ってみてできたこと・できなかったことを具体例として挙げられるので、面接で響きやすくなります。自分も社会に出たイメージが湧いて自信につながります。インターンシップやボランティア活動の回数を重ねるうちに、自分のやりたいことが見えてきて道が狭まっていくので、早いうちに始めることが大事です。

取材を終えて:
留学から就職活動、そして実際に人事採用の経験が豊富な鷹松さんだからこそできるアドバイスをたくさんいただきました。

強力な自己アピールをするためには、いかに他の学生と違うかを明確化すること。それには、在学中からインターンシップやボランティア活動をして、実際に社会人の中で働き、自分自身が社会に出る準備をし、さらに面接官に具体的な自分自身のイメージを伝えることが必要であることがよくわかりました。自分が会社にとって必ず必要となる人材である、またはそんな人材に成長できる素質がある、それを具体的に伝えることが大切なんですね。

実際に自分にも当てはまることがたくさんあり、留学、就職活動だけでなく、これからの人生にも活かせるたくさんのヒントをいただきました。自分のやりたいこと、ときめくことを仕事にする大切さを改めて実感したと同時に、これから自分にあった仕事を探すのが楽しみになってきました。

田部井愛理さん

取材・執筆:田部井 愛理(たべい あいり):
1994年生まれ。成城大学文芸学部英文学科に2年間通学した後、2年間休学し、シアトルの Highline College に留学、Hospitality and Tourism を専攻している。将来はトラベルライターを志す。

掲載:2016年6月

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